2016-12-22 NASAの宇宙飛行商業化に向け、政権移行チーム顧問のピーター・ティールが影響力強化

移行チームに民間企業支持者を追加。一方で自身の利益拡大行為との声も

次期米国大統領の政権移行チームに参加している資産家ピーター・ティールが、NASAの宇宙開発の商業化を強く勧めていると、Wall Street Journalなどが報じています。ピーター・ティールはかつて決済サービスPayPalに関わり巨万の富を得た投資家で、先ごろトランプ次期大統領が開催したIT企業幹部との懇話会で橋渡し役を努めた人物。

現在トランプの政権移行チーム内で宇宙開発担当のグループを主導するクリス・シャンクや、元NASA長官マイク・グリフィンらは、NASAがこれまでどおり独立してロケットや宇宙船を開発するスタイルを継続することを支持、協力会社でもボーイングやロッキード・マーティン、Orbital ATKなどこれまで関わりの深い企業との関係維持を方針として掲げています。

これに対し、ピーター・ティールの主張はSpaceXやBlue Originとの提携も視野に入れた低コストロケット、宇宙船の開発を進め、宇宙開発事業の商業化を進めるべきだというもの。

先ごろ発表された、新たに宇宙開発担当グループに加わるメンバーの候補には、元NASAのチャールズ・ミラー、ニューホライズンズミッションのリーダーだったアラン・スターンなど、宇宙開発の商業化に前向きな意見を持つ人たちが多く含まれていました。このことから、政権移行チーム内でピーター・ティールの意見がある程度浸透していることが伺われます。またトランプ次期大統領がIT企業幹部を招いた懇話会では、SpaceXのイーロン・マスクが会談終了後もその場に残り、ピーター・ティールへの支持を伝えていたとされます。

とはいえ、まだ政権移行チーム全体がピーター・ティールの意見を支持しているわけではない模様。新規メンバー候補にはクリス・シャンク寄りの意見を持つメンバーも含まれているほか、先に挙げたNASAの下請け企業からは、(SpaceXに投資している)ピーター・ティールとイーロン・マスクが、自身の利益のために宇宙開発商業化を次期大統領に勧めているとの声も聞かれます。

最終的に決断を下すトランプ次期大統領が、クリス・シャンクら既存のグループの意見を聞きいれてNASAの独立性を維持するか、予備選挙で自分への不支持を表明していたSpaceXやBlue Originを儲けさせようと考えるのかは、まだわかりません。ただ、シリコンバレーでPayPalマフィアと呼ばれた人々の影響力は、将来のNASAの方向性をも左右するところまで大きくなっていることは間違いないようです。(engadget)