2016-012-15 宇宙旅行が15年後に100万円台? の現実感

子供の頃に夢見た「宇宙旅行」。それが現実のものとなるかもしれない。国内唯一の有人宇宙機開発会社であるPDエアロスペース(以下、PD社)とエイチ・アイ・エス(以下、H.I.S.)、ANAホールディングス(以下、ANAHD)が民間主導による宇宙飛行機の開発を行うことに合意、資本提携した。

実現のカギを握る次世代エンジンとは

「宇宙をもっと身近に」を企業ミッションとし、低コストで利便性の高い宇宙輸送インフラの構築に向けて事業展開するPD社。彼らが現在開発中なのが、これまでの垂直打ち上げ型ロケットと違い、航空機スタイルで離着陸ができ、繰り返し利用できる完全再使用型サブオービタル宇宙機。成功の鍵を握るのは、世界初の試みとなる「燃焼モード切替エンジン」だ。

このエンジンは、離着陸時には旅客機と同じジェットエンジン、空気が薄くなる高度15kmから上はロケットエンジンに切り替えられるのが特徴。これまで相容れなかったジェットエンジンの機能とロケットエンジンの機能が一体にまとまるため、システムが簡素になり、重量も軽減される。

加えて、従来のロケットは、一度使えばそれで終わり。打ち上げるたびに新たに製造する必要があり、コストがかかっていたが、彼らの機体は完全再使用型。製造コストも、運用コストも大幅に削減することができるのだ。

また、普通の飛行機と同じように離着陸が可能となるため、専用のスペースポートを新たに設置する必要がなく、既存空港を宇宙港として活用できる。

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2023年商用運航目指し、H.I.S.とANAHDが出資

これらの開発を促進するため、H.I.S.が3000万円、ANAHDが2040万円を出資。今後、H.I.S.は宇宙旅行をはじめ宇宙輸送サービスの販売、ANAHDは、航空機運航の知見を活かし、パイロットの育成、機体の整備に関する支援を行っていくという。

PD社は、新型エンジンの技術検証を2017年10月までに行い、無人機で高度100キロの宇宙空間に到達させる実験を18年、有人機による同様の実験を20年、そして2023年5月までにアメリカ連邦航空局や国土交通省の飛行許可を取得し、同年12月までに商用運航開始を目指す。

宇宙旅行の総飛行時間は90分で、無重力空間を体験できるのはこの間の5分ほどだという。

PD社は、機体開発と並行して、一般人が宇宙旅行をするために必要な訓練プログラムの提供も行っている。2日間の日程で、メディカルチェックや座学、実地(無重力フライト)を行う。

宇宙旅行の実現性はどれほど?

気になるのは、宇宙旅行の旅行代金だ。PD社の緒川社長は「いきなり価格を大きく下げる必要はなく、市場価格から大きく乖離することはない」と前置きした上で、「海外競合他社の約7割にあたる1400万円程度を想定している」と明かした。宇宙旅行の販売を担う澤田社長は「販売開始から5年後にはヨーロッパ旅行並みの100万円から300万円の価格帯を目指す」と話し、夢は広がるばかりだ。

これまで旅行業のみならず、ホテル事業や航空会社、そして長崎ハウステンボスの再建が記憶に新しいテーマパーク事業など、幅広い視野で観光事業を広げてきた澤田氏。ここ数年は、ロボット開発にも力を注ぎ、2015年7月にはハウステンボス内にロボットがフロント業務などを行う「変なホテル」を開業。

そんな澤田氏が、次なる事業として宇宙旅行に目をつけたのは必然の流れと言えるかもしれない。

宇宙ホテル構想も……課題は資金集めとスピード

「宇宙機が安定的に運航するようになれば、ゆくゆくは“宇宙ホテル”も作りたい。宇宙旅行の市場を独占する考えはなく、競合他社さんでもぜひ販売をしてほしい。宇宙旅行、夢があるじゃないですか」と宇宙旅行への思いを明かす澤田氏。

さらに「技術と人は大切だが、資本力がないと進まない。アメリカのベンチャー企業は資金が集まりやすいが、日本は資金が集まりにくいのが現状。日本の新しい技術が世界で競争力を持つことができ、世界でいち早く宇宙旅行へ名乗りをあげられるよう、いろんな方に協力してほしい」と呼びかけた。

最大の課題は、総額170億円と見積もる開発費集め。会見の最後に「応援してもらうことは多いが、お金は出さない人ばかりなんですよね(笑)。来る者=パートナーは拒まず。やりたいなら来い! 」と力強く宣言した緒川社長。

一方、澤田氏は「当初の計画から後ろ倒しとなったのは、資金力の問題。本来のベンチャー企業のように開発速度をあげるためには、もっと大きな増資をすべき」と後押しする。 大手2社が出資に参加したことで、大きく動き出した宇宙旅行プロジェクト。その実現の可否は、資金力とスピードにかかっている。(マイナビニュース)

(編集者コメント:そんなに簡単に宇宙船を開発できるのかな?)