2016-05-09 宇宙空間で生理になったらどうする? 研究者が注目するベストな方法

世界的にも理系分野における女性の活躍が増えている昨今。国際宇宙センター(ISS)では今後さらに増え続けるであろう女性宇宙飛行士のために、宇宙空間での月経に関する研究がなされています。

宇宙用タンポンは開発不可能?

宇宙空間では使える水の量に厳しい制限があるため、体を洗い流せず、生理中に体を衛生的に保つのは簡単ではありません。そのうえ、微重力状態で使える生理用ナプキンやタンポンといった衛生グッズの開発にも、さまざまなハードルがあります。

国際宇宙センターでは、資源のない宇宙空間でも人間が生存できるよう、排泄物から水分を抽出して再利用するシステムが研究されていますが、生理中の排泄物には経血がたくさん混じっているため、おそらく再利用は不可能だろうといわれています。

地球上でも面倒に感じる生理ですが、宇宙空間ではその何倍も不都合なことが多いのです。

宇宙空間でピルは使えるか

ロンドンに拠点を置く人間航空宇宙生理科学センター(Centre of Human & Aerospace Physiological Sciences)の研究者によれば、宇宙で長期滞在する場合、大事になってくるのは「月経をいかに抑制するか」であるといいます。つまり経血をどう処理するかではなく、生理そのものをなくしてしまうという方向に研究は進んでいるようなのです。

皆さんもご存知のように月経の抑制には、いくつか方法があります。

最も知られているのは経口避妊薬(ピル)。長らく多くの女性宇宙飛行士によって使用されてきましたが、ホルモンをコントロールするため、地球上で使用しても骨密度に影響を及ぼす可能性があるとされています。骨密度のわずかな低下は地球にいる限り大きな問題にはなりませんが、滞在するだけでも骨密度が低下するとされている宇宙空間では、ピルを飲むことでその低下を加速させてしまう恐れがあります。

ピルにはもう1つ問題があります。それは量。ピルは毎日欠かさず飲まなければ効果がありません。となると、例えば3年間の宇宙滞在では約1100錠ものピルが必要となり、その梱包に使われる資材も含めば、かなりの“荷物”になってしまいます。健康面と物理面の両方で、宇宙空間のピル使用には、大きな困難があるわけです。

専門家が推奨するベストの選択肢は◯◯

そこで、研究者たちがベストな選択肢だと主張するのが、LARC(長時間作用型可逆避妊法)。子宮内に装着して数年にわたり避妊が可能になるIUD(子宮内避妊器具)や、避妊用インプラントといったものです。一度処置をすれば長時間にわたって月経が抑制されるうえ、もちろんピルのように骨密度の低下を招くこともありません。地球上で装着すれば荷物にもならないので、かなり有望な方法です。

IUDには、月経を抑制するために時間をかけて少量のホルモンを体内に放出するタイプと、銅イオンを体内に放出することで妊娠を防ぐタイプの2種類があります。後者は高い避妊効果があるものの、月経を抑制するものではないので、研究者たちが注目しているのは前者です。

避妊用インプラントとは、腕の内側の皮下に黄体ホルモンを徐々に放出するインプラントを埋め込むというもの。皮膚に麻酔をして処置するだけなので簡単です。本来は避妊が目的ですが、月経を抑制する効果もあるため有力視されています。皮膚の下に埋め込んでしまうので、服を着る時に邪魔になるといった心配もなく、宇宙服でも問題ありません。

地球上では有効な避妊法として10代にも普及

ここで紹介したIUDや避妊用インプラントが、実際に宇宙の長期滞在に適しているかどうか、何も問題が発生しないかどうかについては、まだまだ研究の余地あるそうです。もっとも地球上では、欧米を中心にどちらも有効な避妊法をして産婦人科医や行政が推奨しています。アメリカの小児科学会は、なんと10代にも普及させようとしているとのこと。

宇宙空間で生理になったらどうするの?

そんな問題は、地球上でのんきに暮らしている私たち一般人には無関係に思えまずが、この地球上で女性を守ってくれている方法が、遠い遠い宇宙空間でも煩わしい生理から女性を助けてくれるのだと聞くと、なんだか感慨深いものがあります。宇宙研究のなかでは、「女性の生理をどうするか?」なんて、きっとそれほど優先順位の高い課題ではないと思いますが、一人の女性として一日も早くベストの解決策が見つかることを願っています。(wotopi)