2011-01-25 宇宙ごみを漁網で一網打尽 広島の老舗とJAXA開発中

人工衛星の残骸など、地球の周りに増え続けて問題化している「宇宙ごみ」に、長さ数キロの「網」をつけて大気圏に突入させ、燃やしてしまおうという試みが、広島県の老舗漁網メーカーと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の間で進められている。

 昨年創業100周年を迎えた「日東製網」(福山市)がJAXAと共同開発中の「宇宙ごみ除去システム」。

 まず、金属で編んだ長さ数キロの「導電性テザー」と呼ばれる細長い網を「捕獲衛星」に積み、ロケットで打ち上げる。軌道に乗った後、衛星のロボットアームを使って宇宙ごみに網を取りつけ、アームの先端を切り離す。

 網は地球のまわりを周回することによって電気を帯びる。これが地球の磁場と影響し合って、徐々に高度を下げさせる力となり、大気圏にごみごと再突入して、最終的に燃え尽きるという仕組み。ごみを移動させるのに、燃料が不要というメリットもある。

 日東製網は創業15年後の1925(大正14)年、結び目なしに編み上げる丈夫な無結節網(むけっせつあみ)の製造機を世界で初めて発明した。ひもが交わる部分に結び目がある網よりも切れにくいうえ、漁船の上で折り畳んでも軽く、かさばらないなど画期的な網だった。この網で国内シェアの半分を占めるトップ企業に成長。現在も定置網漁や底引き網漁など漁業に幅広く利用され、マグロ養殖用の網なども海外に輸出している。

 こんな実績もあり、同社は6年ほど前、JAXAから「電流が流せる網を作ってほしい」との依頼を受けて研究を始めた。太い鉄製の針金から、曲げるとすぐに折れてしまう炭素繊維まで数十種類の素材を試した。昨年夏、アルミワイヤとステンレス繊維を組みあわせたテザーの開発にこぎつけた。

髪の毛ほどの細さの繊維をより合わせた直径約1ミリの銀色のひも3本が、網状に編まれている。両手で持ってみると、あやとりのひものように柔らかくたわむ。宇宙空間を飛び交う小さなごみと衝突して1本が切れても、残り2本で耐え、網の機能が保てる仕組みだ。

 ロケットでの打ち上げ時期は未定だが、同社は2年後の完成を目標にしている。開発を担当する同社技術部化学課の尾崎浩司さん(41)は「ナイロンなどで編む漁網と違い、硬い金属製の網を編むのは難しい。ちぎれて使い物にならない失敗作も作ったが、やっと実用可能なテザーができた」と、宇宙ごみの「一網打尽」に意欲をみせている。(asahi.com)