2007-10-27 3年後打ち上げ目標、上空180キロ「超低空衛星」開発へ

 上空180キロというこれまでにない低い高度を回る新型の観測衛星の開発に、宇宙航空研究開発機構(立川敬二理事長)が乗り出すことが27日わかった。超低高度なら、高倍率のカメラを搭載しなくても、地表や気象の観測が可能になり、大幅なコスト削減につながる。宇宙機構は既に特別チームを設置、3年後の打ち上げをめざしている。

 新衛星は、太陽電池を側面にはりつけた形で、長さ約3メートル、重さ400〜600キロの小型。衛星は通常、高度500〜1000キロを回り、推力は持たないのが一般的。ロケットで打ち上げた勢いで、慣性飛行を続ける。

 高度180キロでは、わずかな大気の抵抗があり、普通の衛星だと推力を失い、2〜3日で地球の大気圏(高度約100キロ内)に突入する。新衛星はこの課題に対し通常のロケットエンジンの10倍の性能を持つ「イオンエンジン」を搭載して高度を維持し、3年以上も周回できるという。

 イオンエンジンは、小惑星探査機「はやぶさ」でも高性能が実証された宇宙機構の独自技術。超低高度なら小型カメラでも十分機能する。また、レーダーを搭載すれば、少ない電力で高い解像度を持つ観測衛星になるという。

 費用は搭載機器にもよるが、コストは従来の衛星の3分の1〜5分の1に抑えられると宇宙機構ではみている。3種類の大型センサーを搭載した観測衛星「だいち」は550億円の開発費がかかっている。

 日本の衛星は高度600キロ以上を周回。国際宇宙ステーションでも330〜480キロ程度。来年、欧州宇宙機関が高度250キロを回る衛星を打ち上げる予定だが、宇宙機構の新衛星は、それをしのぐことになる。(読売新聞)