2007-10-26 中国、有人月面着陸計画とタイムテーブルは未定

中国初の月探査衛星「嫦娥一号」が24日、打ち上げられ、中国の宇宙事業のさらなる前進を示し、国内外の関心を呼び起こした。

次なる中国の月探査戦略についての様々な推測について、国防科学工業委員会関係者は、「中国には現在、有人月面着陸計画もそのタイムテーブルもない」と明言している。

新華社記者の取材に対し、権威ある専門家の多くは口を揃えて、有人月面着陸プロジェクトの実施については、科学面でのニーズや投入資金はじめ様々な要素を考慮する必要があり、現在は「時期尚早」だと語っている。

月周回探査プロジェクト総指揮者の欒恩傑氏は、「有人月面着陸プロジェクトは、難易度が高く、リスクが大きく、巨額の投資を必要とする。ひとりよがりの情熱から実施を決定することや、急いで安易にスタートすることは、決してすべきでない」とコメントした。

目を背けてはならない現実は、中国の科学技術力から見て、有人月面着陸への道のりが遥かに遠いものであることだ。

十分に掌握された運搬技術は、人類の宇宙探査深化と月面着陸の実施のための基本条件だが、中国の運搬能力はまだその条件を満たすレベルに至っていない。

権威機関の資料によると、中国が現在までに「長征シリーズ」キャリア・ロケット12種類を開発・製造してきた。重量9トンの有人宇宙船を300数キロメートルの外周軌道に送り届ける最大推力を備え、重量5トンの衛星を3.6万キロメートルの地球同期軌道に送り届けることが可能だ。しかし、この運搬能力は、有人月面着陸実現のための条件と比べると、まだ相当の開きがある。

中国は現在、ロケット運搬能力の大幅アップを可能とする新世代キャリア・ロケットの開発を加速させている。これは、重量25トンの宇宙船を近地球軌道に、重量14トンの宇宙船を地球同期軌道にそれぞれ送り届けることが可能なものだ。しかし、新世代キャリア・ロケットの開発完了にはあと数年を要し、また、新世代キャリア・ロケットは宇宙飛行士を月面に着陸させる機能は備えていないと専門家は指摘している。言い換えれば、宇宙飛行士に提供できるのは月への「片道切符」だけで、行っても帰って来ることはできない。

運搬能力不足はほんの一要素にすぎない。「両弾一星」(原爆・弾道ミサイル・人工衛星)研究製造の功労者として表彰された月周回探査プロジェクト総設計者の孫家棟氏は、「有人宇宙飛行から有人月面着陸にいたる工程は複雑極まりないシステムで、宇宙飛行士の船外活動、宇宙船のドッキング、月面への帰還、月面での生存など、攻略すべき技術関門は山積みだ」と語る。

孫家棟氏はまた、「我々にはまだこれらの条件が備わっておらず、短期間で解決しうる問題ではない」と続けた。

月周回探査プロジェクト月応用科学首席科学者の欧陽自遠氏は、「中国は月探査衛星を一度打ち上げたにすぎず、月に対する理解はまだまだ限られたものだ。一歩ずつステップを完成させ、月周回探査の成果を吸収した後、次の科学研究とニーズを徐々に開拓できる」とコメントした。

国防科学工業委員会関係者は新華社記者の取材に対し、「有人月面着陸プロジェクトの展開は、中国の国情と国力を考慮に入れなければならない。「周回」「落下」「帰還」という無人月探査業務の3ステップを基本的に完成させ、宇宙飛行士の船外活動、宇宙船ドッキングなどのコア技術を掌握して初めて、今後の海外と国内の月面探査の発展状況と結合させ、時機を捉えた有人月面着陸の実施が可能となる」と述べた。(人民日報)