2007-09-21 今後50年間の宇宙探査--科学者らが議論

科学者らは、今後50年間の宇宙探査でほかの生命体を発見できると期待している。

 宇宙飛行50周年を数週間後に控えた米国時間9月20日、航空宇宙工学の技術者、宇宙企業家、宇宙飛行士らがカリフォルニア工科大学(CIT)に集まり、過去を振り返るとともに、今後50年間の宇宙探査について議論している。

「50 Years in Space(宇宙に見る50年)」と題されたそのカンファレンスが、2日間の日程で開催されている。そこでは、1957年10月4日にソビエト連邦が行った人工衛星スプートニクの打ち上げが大きく取り上げられた。宇宙飛行士で元上院議員のHarrison "Jack" Schmitt氏は、スプートニクの打ち上げについて、「知的社会に激震」が走り、宇宙に対する関心を引き起こした最初の出来事だったと語った。たしかに、米国は翌年の1958年11月に航空宇宙局(NASA)を設立している。また1961年には、John F. Kennedy大統領が、1960年代末には米国民が月面着陸を果たすと宣言した。そして1969年7月20日、米国はアポロ11号で初めて人類を月面に着陸させることに成功した。

 初期の宇宙飛行は、人類初の月面着陸という画期的出来事の実現にとどまらず、その後数十年間に及ぶ技術革新や科学的発見への道を開くとともに、大規模な宇宙産業をもたらした。科学者らは、宇宙に関する新たな技術や知識により、今後数年間でわれわれがもっと先まで容易に突き進むことができるだろうと考えている。

 NASAの研究施設であるCITのジェット推進研究所(JPL)の名誉ディレクターを務めるEd Stone氏は、朝の基調演説で次のように述べた。「最初の50年間で、われわれは宇宙に実在するさまざまな場所についての新たな見方や、新しい知識を身に付けた。そして当然ながら、新しい技術は必要不可欠だった」

 「宇宙の予想外の多様性は、われわれに新たな視点を与えた。その多様性は、(宇宙に)まだ発見すべきはるかに多くのものが存在することを保証するとともに、われわれに新境地を宇宙へと拡大するよう促している」(Stone氏)

 またJPLの主任技術者でCITの教授でもあるPaul Dimotakis氏は、地球上のすべての物体を集めても宇宙に存在する物体のわずか4%にすぎないことを考えると、「恐らく向こう50年間に、宇宙にわれわれの仲間が存在するのか否かが明らかになるだろう」と付け加えた。

Stone氏は、宇宙における未知の分野として、物質、知識、技術(宇宙を旅行するための能力の開発)、人間、応用の5つを挙げた。「われわれは過去50年間に、これらの未開拓分野の調査、研究において驚異的な前進を遂げた」とStone氏は語る。また同氏は、それらの分野の研究によって導かれた宇宙に関する新たな視点の例をいくつか挙げた。例えば、科学者らは、土星探査機カッシーニのミッションを通じて地表から吹き上がるプルームの様子を見て、「一体このエネルギーはどこから来るのか」との疑問を抱いた、とStone氏は語った。

 また別の例では、2004年に火星に着陸した火星探査機を使ったミッションでクレーターの岩盤を調べたところ、かつて火星に大量の水が存在したことを示す調査結果が出た。「地球では、水のある場所には必ず生命体が存在する」(Stone氏)

 JPLのPlanetary Flight Systems Directorate(惑星飛行システム理事会)の主任エンジニアであり、SF作家でもあるGentry Lee氏は、宇宙工学技術者という同氏の職業が過去50年間に遂げた変化は、同氏の幼少期にそのような職業が存在しなかったことを考えると、大変劇的だったと語った。

 Lee氏は、最大の変化の1つの原因としてコンピュータを挙げた。例えば、初期の宇宙計画では、シミュレーションはすべてハードウェアを使って行われた。しかし、現在は飛行シミュレーションの99%はソフトウェアを使って行われるという。一例として、1976年の探査機バイキングを使った火星探査ミッションでは、探査チームはメインフレームコンピュータを使い、一晩かけて火星への突入と着陸のシミュレーションを行っていたのだろう。しかし、現在は「私のデスクトップを使えば10分でできてしまう」とLee氏は語る。同氏は、過去12年間、バイキングプロジェクトの研究を行ってきた。

 「たしかにコンピュータは素晴らしいツールではあったが、弱点もある」とLee氏は指摘する。「コンピュータプログラムのユーザーは、そのプログラムの開発に関わっていない場合が多い。そのため、われわれエンジニアは、コンピュータやプロセスはわれわれを導く道具であり、エンジニアリングの内容そのものではないということを忘れてはならない」

 現在と50年前の唯一の共通点は人的要因だとLee氏は語る。「適切なプロセス、ツール、コンピュータを用意するだけでは不十分だ。それらを束ね、リスクを軽減できる適切な人材を用意しなければならない」(Lee氏)(CNET Japan)