2007-09-21 室蘭工大が白老にロケットエンジンの実験場開設

 室蘭工業大学(松岡健一学長)は20日、白老町に小型ロケットやジェットエンジンなどの燃焼実験と高速走行試験の予備試験を実施する試験設備「白老エンジン燃焼実験場」を開設すると発表した。全国の国公立大学の中で最大規模の設備となる。今後、国や民間の研究機関と共同研究を進める。航空宇宙分野で先頭に立った取り組みが期待される。

 建設地は、白老町北吉原の町有地約6000平方メートル。町が所有する白老滑空場の隣接地で室工大が町から借り受ける。最も近い民家との距離は約1キロ。建設するのはエンジンのテストスタンドや計測室、高速走行試験で使用するレールなど。初期の建設費に約1000万円を見込んでいる。

 実験場では、小型ジェットエンジンやロケットエンジンなどのシステム特性の調査や検証、エンジンシステムを構成する主要機器の特性調査や検証、高速走行軌道設備の軌道や走行装置に関する基礎設計データを取得する。推力1トン程度の実験が可能になる。民間のIHIエアロスペースやJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究を進めていく。

 建設工事はすでに始まっている。今月末までに整地を終え、11月中をめどに高速走行試験用のレール(全長50メートル)を敷設、年内にも最初の実験を行う予定。その後、レールは100メートルまで延伸する計画。今後、段階的に設備整備を進め、平成20年度から本格的に施設利用を始める。

 室工大は当初、室蘭市など大学の近場で建設地を探したが、保安距離の確保や騒音面で難航。7月に入り、白老町の現在地を見つけ、今月20日に白老町と土地契約を交わした。今後、地元の日本航空学園と教育、研究分野での連携のほか白老滑空場を活用した飛行実験などを検討している。

 室工大は17年3月、航空宇宙機システム研究センターを開設。次世代の航空機、宇宙機実現に向けて「大気中を高速、高々度で飛行するための基盤技術を創造する」ことを目指し研究を進めてきた。超音速風洞、小型ジェットエンジンテストセル、フライトシミュレーターなどを整備。20年4月には大学院に航空宇宙システム工学専攻を新設するなど、設備、制度両面で体制づくりを進めてきた。

 センター長の棚次亘弘教授(推進工学、エネルギー工学)は「本格的な研究ができる環境が整い民間、国への支援が可能になる。航空宇宙技術はあらゆる技術の上に立つ付加価値の高い分野で日本のものづくり技術を維持するのに貢献できる」と話す。さらに文科省が奨励する研究や企業の現場を見せる実践教育・コースワークに十分応えられる施設とした上で「研究現場での実践教育を通して、ものづくりの即戦力となる人材を輩出したい」と展望している。

 白老町の煤孫正美副町長は「本道は航空産業の誘致も活発になっている。室工大が設置する白老エンジン燃焼実験場は、将来的に研究等の基盤施設になることも期待される。日本航空学園との連携も生まれ、新しい白老のまちづくりも開けてくる」と歓迎している。(室蘭民報)