2006-07-29 目指せ“九州産”第1号 鹿大、九大衛星開発へ 宇宙機構に応募

 九州産の人工衛星を宇宙に―。宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)が鹿児島県・種子島から打ち上げるH2Aロケットに相乗りさせる小型の人工衛星を全国に募集し、大学が中心になって開発に乗り出している。九州でも“九州産衛星”の第1号を目指し、九州大(福岡市)などが応募を表明、鹿児島大(鹿児島市)も準備を進めている。 (鹿屋支局・野村大輔)

 ■宇宙利用を拡大

 宇宙機構によると、研究や教育を目的とする重さ1―50キロの小型衛星を全国の大学や企業に募集。「宇宙の利用を増やし、宇宙産業のすそ野を広げる」のが目的だ。8月末締め切りで、10―20基の応募を見込む。

 鹿児島大が開発しているのは、集中豪雨を発生させる大気中の水蒸気量を観測する1辺10センチの衛星。西尾正則助教授(電波天文学)は「外国での打ち上げも考えたが、大きなチャンスだ」と語る。

 一方、九州大と九州工業大(北九州市)、福岡工業大(福岡市)は共同で、衛星の故障原因となる宇宙の電気磁気現象を調べる「磁化プラズマ観測衛星」開発を進める。九工大は独自の衛星も準備中。

 ■相乗りメリット

 日本の大学が外国のロケットで小型衛星を打ち上げた例は過去にあるが、H2Aに相乗りさせるメリットは何か。

 ロシアのロケットや国産のM5ロケットで小型衛星打ち上げの実績がある東京工業大の松永三郎助教授(宇宙システム工学)は、(1)打ち上げ費用が無料(2)衛星を輸送しやすい(3)宇宙航空機関との折衝や手続きがやりやすい―などを挙げる。

 また、自分たちが手掛けた衛星を宇宙に放つことで、宇宙分野での活躍を目指す学生たちにも刺激や励みになり、教育的効果も大きいという。松永助教授は「日本の宇宙開発の総合力が高まるだろう」と期待する。

 ■九州は“後発組”

 日本の大学では、東京大と東工大が小型衛星の分野をリードし、九州の大学は、打ち上げ実績がない。

 九工大の趙孟佑・宇宙環境技術研究センター長(航空宇宙)は「九州は打ち上げ基地があるのに後れを取ってきた。九州に宇宙を目指す学生が集まり、関連企業が増えてほしい」と期待する。

 宇宙機構は、書類審査などを経て小型衛星搭載候補のリストを作成。2008年度以降、H2Aロケットに順次搭載して種子島宇宙センターから打ち上げる。(西日本)