2016-01-29 「下町の人工衛星」、金シャチ2号が宇宙へ

来月12日に打ち上げられる小型人工衛星「ChubuSat(中部サット)―2」(愛称・金シャチ2号)について、名古屋大は27日、概要を発表した。

 金シャチ1号と同様、大同大(名古屋市)や、愛知、岐阜県の中小企業でつくる「MASTTマスト」と共同開発。関係者は「“下町の人工衛星”打ち上げで、中部地方の航空宇宙産業の高い技術力がアピールできれば」と期待を込めている。

 金シャチ2号は高さ63センチ、幅56センチ、奥行き55センチで、重さは約50キロ。宇宙航空研究開発機構(JAXAジャクサ)が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げる「H2Aロケット30号機」に、他の小型人工衛星と相乗りさせる。

 ロケットは、巨大ブラックホールなどを観測し、宇宙の成り立ちの解明を目指すX線天文衛星「ASTRO―H(アストロH)」を主衛星として搭載。金シャチ2号は、太陽表面の大規模な爆発現象「太陽フレア」に伴って放出され、アストロHの観測の妨げや地球上の電波障害になる中性子などを測定し、アストロHをサポートする。

 中性子の観測は、2014年に名古屋大大学院生のグループが提案して採用された。院生らは、中性子とガンマ線を同時に測定できる検出機器(約15センチ四方、重さ約6キロ)の設計や開発に携わり、衛星に強い衝撃や振動などを加え、過酷な環境に耐えるための試験を繰り返し実施してきた。グループ代表の理学研究科博士後期課程1年の河原宏晃さん(25)は「自信を持って宇宙に送り出せる。宇宙から観測データが届くのが楽しみ」と話した。

 「金シャチ」の打ち上げは、民間の宇宙開発への参入促進につながると期待されている。しかし、1号は打ち上げ後に電源トラブルに見舞われ、現在は運用されておらず、プロジェクトを担当する山岡和貴特任准教授は「2号はリベンジ戦」と位置づけている。

 また、アストロHに搭載される2種類の望遠鏡と4種類の検出器のうち、望遠鏡と検出器それぞれ1種類ずつは名古屋大が中心となって開発した。従来に比べ、X線をより高精度に捉えられるようになり、ブラックホールの解明や、新たなブラックホールの発見につながると期待されるという。(Yomiuri)