米への挑戦を拡大するために、中国政府は宇宙探査に向けた野心的な5か年計画を発表した。この計画では、米国が宇宙計画で後退しつつあるときに競争国としてメジャーな存在になることを目指している。
中国が初期に約束している宇宙ステーションの建造と有人月面基地建設の促進は、冷戦時代の米ソ宇宙競争を思い起こさせる。近年、積極的な有人宇宙飛行から後退気味の米国は国際宇宙ステーションへの物資輸送と宇宙飛行士輸送ではロシアに完全に依存している。しかしロシアは衛星打ち上げに失敗していることで信頼性に黄色信号が点滅している状態である。
中国は経済成長力を発揮できる分野を模索してきているし、科学技術分野での支配的地位と科学的功績を世界に示すことで世界的なパワーを誇示できる。発表された宇宙計画では宇宙実験室の打ち上げと月からのサンプル持ち帰りを2016年までに実現することが含まれている。その実現にはより強力で高性能な有人宇宙船の開発と宇宙輸送機の開発を実行することになる。
ここ数年、中国は経済力を基礎にして軍事力構築に画策しており、潜水艦隊の拡大、ソビエトをモデルにした航空母艦の試験航行も実現した。新しい宇宙計画の下で中国版GPSの拡大を目指しており、軍民の利用能力を拡大する。
今回の宇宙計画では目標達成のために軍民の人材と資金を結集すると見ることができる。これは中国政府としては宇宙計画は中国経済の利益をさらに拡大すると主張している。
中国は衛星打ち上げビジネスでは世界のリーダである一方、宇宙開発全体では米国に大きく遅れている。有人宇宙飛行を実現したといっても1960年代のソ連と米国のレベルである。しかし中国は開発プログラムに沿って時間通りに開発を実現していることから、今後5年間の計画も現実的な目標と見ることができる。ただしこれも共産党の権威主義体制が存在しているからこその話である。
有人宇宙飛行計画については中国の安定したミッションを継続するが技術開発の努力を急がず、むしろ地道に能力開発を拡大しようとしている。計画では中国は宇宙飛行士を月面に着陸させるための技術開発を開始するとなっているが、タイムスケジュールを明確にしていない。米宇宙政策専門家の視点から見ても宇宙計画は包括的であり適度な速度で進めようとしていることから暴走するようなプログラムではなく、安定的なプログラムであると指摘している。
対照的にNASAの方向性は大統領が変われば計画も変わる傾向にある。ジョージブッシュ大統領はNASAは2020年までに月に戻ることを求めた。オバマ大統領はこのプログラムをキャンセルし、現在では小惑星に宇宙飛行士を送ることを求めている。NASAは30年間続いたスペースシャトルプログラムを終結した。米の宇宙専門家は中国の宇宙プログラムを”突発的に開始しない”と表現している。中国の宇宙予算は少ないが十分に準備されており整然としたプロセスで予算を継続している。NASAはその反対である。
ある専門家は中国の宇宙プログラムのアプローチは軍事技術の近代化であるとみている。さらにウクライナから購入した航空母艦に加え、対艦弾道ミサイルも改良している。このミサイルは外国の軍艦に向けて配備可能である。昨年の1月、中国軍部はステルス戦闘機の試験飛行を行った。これはゲーツ国防長官が訪中する直前のことであった。
個別の軍事と民事宇宙プログラムが存在する米国とは異なり、中国では中国解放軍が宇宙開発の中核を担っている。大学や研究所といった非軍事機関は軍事部門が後押しをしている。国務院が発表した宇宙計画の白書では、中国政府は宇宙プログラムを利用した国家的軍事活動を目指そうとしてないことを世界に示そうと苦慮していることを見て取れる。白書には「中国は常に宇宙利用を平和目的に利用し、宇宙軍事利用や軍備競争に反対している。」と書かれている。
今回の宇宙開発5年計画のなかで専門家が注目している点は、さらなる北斗測位衛星システム(Beidou Navigation Satellite System)のさらなる発展であり、中国と近隣諸国でのナビゲーション、測位、タイミングデータをより正確に提供する。白書では中国が行おうとしていることは2020年までに地球規模のシステムを展開する計画である。衛星数は35機。目標が達成されると中国はロシアと協力して米国のGPSと競争することにもなる。
北斗はそれほど先端的な衛星システムではない。しかしロシアのグロナス測位衛星システムをしのぐことになり、米国のネットワーク民間版に依存しない測位システムを中国軍に提供することになる。北斗はGPSと同様に民間利用を促進し自動車ドライバに情報を提供する。
2000年と2006年に発行された類似のレポートに続いて発表された白書では、さらに新型打ち上げロケットの開発を進める。このロケットは従来よりさらに打ち上げ能力を高める。結果として将来人間を乗せて有人宇宙飛行に利用される。
有人宇宙開発の土台を築くために中国は宇宙研究室、有人宇宙船、そして宇宙輸送船を打上げて大躍進を成し遂げ、宇宙ステーションのカギとなる技術を習得する。これには宇宙飛行士が数週間滞在する技術、再生型生命維持装置、燃料補給、そして将来の宇宙ステーション建設に向かった応用技術の開発などが含まれる。
太陽系探査では月面軟着陸宇宙船開発、ローバ開発、探査技術等を実現させる計画である。それに続き、月面サンプル持ち帰りを実現すると白書では述べられている。
2003年、中国は人間を宇宙に投入した国家としてはロシア、米国の次いで三番目の名誉ある国家として歴史に刻んだ。2007年には月探査機を打上げ月を周回して多くの画像を収集した。続く翌年には13分という短時間ではあるが宇宙遊泳も実現した。
最新鋭ロケットとなる長征5号ロケットを開発中であるが、LEOまで25トンを打ち上げる能力を有している。これは米国のデルタⅣ大型ロケットに匹敵し、アポロ計画で使われたサターンⅤロケットより小型である。長征5号は月探査機を部分的に地球軌道に輸送するには十分であり、軌道上で組み合わせて月探査機として完成させて月探査に向かう。ゆっくりながらも着実に米国の技術に近づいている。
米国民にとっては中国が米の宇宙技術を追い越す可能性があるとの認識は気分を悪くさせている。