2005-05-02 日本の宇宙ステーション、セントリフュージ開発中止の懸念(SpaceNews)

米政府高官によると、日本が開発している国際宇宙ステーションの一部で遠心分離モジュール(セントリフュージ)の開発を取り消すこともNASAの可能性の一つとして検討されており、この中止によって日米の共同プロジェクト遂行をさらに困難にさせるだろうと語った。

文科省宇宙宇宙利用推進室信濃正範室長によると、もし仮にセントリフュージが打ち上がらなかった場合、政府も一般市民も宇宙ステーションに日本が果たす役割に疑問を抱くことになると、3月25日に述べている。

セントリフュージは生物医学的実験や他の科学研究で、様々なレベルの重力環境を発生させる装置である。この装置はNASAとJAXAのバータ取引の一環として日本が開発を行うもので、開発を行う代わりに日本のJEM(きぼう)モジュールを無料で打ち上げてもらう。

しかし、セントリフュージは技術的且つ予算的な問題によって悩まされており、打上げ日も遅れ、その能力をも低下させていった。今、月に宇宙飛行士をもどすジョージ・W.ブッシュ米国大統領の計画の中で要求されるように2010年にシャトルを引退せることができるように、NASAは宇宙ステーションを完成するのに必要なシャトル・ミッションの数を減らす方法を捜している。NASAは、昨年、宇宙機関の新しい調査命令に直接貢献する、宇宙ステーションの要素の鑑定を目指した内部調査を着手した。

2020年までに月あるいは火星に宇宙飛行士を行かせることに寄与しないものを中止する場合もある。
NASAは5月までにその調査を終了する予定であり、それまではいかなる決断も下されない。NASAスポークスウーマン、デブラRahnは3月30日に述べ、米国の宇宙機関は恐らく有人宇宙探査に関連した重大な医学・技術的な危険に取り組むために宇宙ステーション研究計画のいくつかの要素を方向転換することもあり得るが、他のステーション設備への影響があるかどうかは現時点では分からない、としている。
しかし、NASAの長期的目標の名のもとにセントリフュージは犠牲にされるという共通認識はNASAウォッチャーや専門家の間では強まっている。JAXA広報担当の滝沢氏によると、NASAは、モントリオールで1月に開催した各国宇宙機関の宇宙ステーション担当責任者の会合で、宇宙ステーション研究事項を再検討していると日本に初めて通知した、とのこと。

またNASAは「これらの優先事項に基いたステーションの要素の方向転換を提案する場合もあるが、まだその計画についてはJAXAに通知がきていない。NASAとJAXAの間の議論に精通しているある日本政府高官は、JAXAが非公式にだが、数回にわたり、セントリフュージ中止の可能性に対する懸念の意向をNASAに対して表明していると語った。

Rahnは、NASAがパートナーすべてに最新の継続評価の情報を常に最新にしておいており「ステーションを使用して、NASAの研究努力に関する決定によって影響される場合があると想定されるあらゆるパートナーと緊密に調和し続けるだろう」、と語った。セントリフュージの主契約企業は東京の三菱重工業である。同社の宇宙システム部長の栗原氏は、同社のセントリフュージ開発は全て順調であると電子メールで答えたが、その他のコメントは出していない。

NASAのエームズ研究センターは先端動物収容装置製造の責任者であるが、この装置は遠心力の研究課題として使用する予定である。NASAスポークスウーマン、トレーシー・ヤングは、2006年5月にフロリダのケネディー宇宙センターへこの重力発生装置が輸送される予定であると述べている。

文科省信濃室長は、セントリフュージはNASAが所有しており、日本人研究者が、ハードウェアを使用する計画を持っていないこと認めた。しかし、彼は、プロジェクトの中止によって7億ドルの投資を行ったことを示す証拠が何ものこらないことになる可能性があると語った。

これに続く世間の批判によって、高額の宇宙計画用予算を今後安全に確保することが困難になり、そしてNASAとの協力事業も警戒するようになると述べている。しかし、ある元上級日本人政府高官はセントリフュージの中止はある意味では歓迎される部分もあり、他の宇宙プログラムへ貴重な予算を配分することも出来るようになると述べている。「私は三菱重工は腹を立てているかも知れない」とある情報筋は電話で述べている。

しかしながら、実際には、JAXAはNASAのステーションに関する決定を受理する以外には方法がなく、予算不足という意味ではNASAもJAXAも同じ立場に置かれている。JAXAは多くの新しいプログラムを計画しており、長期計画という視点では、セントリフュージ中止は救済手段とも言える。

(編集者コメント:セントリフュージに関しては、2001年にすでにNASAの会計検査が指摘している。国際宇宙ステーションのセントリフュージモジュール(遠心力発生モジュール)の設計における技術的難しさが、日本の宇宙開発事業団(NASDA)の予算問題に発展する可能性があると、NASA会計検査官Malcolm Peterson氏が述べている。Peterson氏によると、このモジュールの開発者であるNASDAが直面している技術的問題点は、結局コスト超過を招くだろうと述べた。そして、再設計作業によって、大幅なコスト上昇に対する検討が必要になるだろうと述べた。

4年前にすでにこの件について米国側で指摘されていたにも関わらずそのまま今日に至っているのは問題と思われるが、それなりの裏事情があることも確か)