2005-03-12 中国 衛星発射基地、海南島に新設へ 軍事分野での宇宙利用加速も

十一日の新華社電などによると、中国は南部の海南島(海南省)に国内四カ所目となる宇宙衛星の発射センターの建設方針を固めた。上海万博が開かれる二〇一〇年までの完成を目指す。好調な中国製ロケットの打ち上げ実績を背景に、新型ロケットの投入を含めて衛星ビジネスを加速させる構えだが、弾道ミサイル技術の向上や偵察衛星など軍事分野での宇宙利用も強まりそうだ。

 とくに軍事利用に関しては、陸海空三軍、戦略ミサイル部隊に続く「宇宙作戦部隊」の設立を提言した軍部の研究報告も浮上。中国の新たな宇宙基地建設は、H2Aロケットで商業利用の加速を目指す日本にとり、ライバルの陣容強化に加え、安全保障面からも無視できない動向といえる。

 海南島での衛星発射のメリットについて、中国の専門家は、赤道に近いために静止軌道に衛星を乗せやすいほか、海上運輸の容易さ、航空管制など周辺の安全確保を指摘する。中国の宇宙基地建設は、一九七〇年着工の西昌センター以来。過去の宇宙基地は国防上の配慮から内陸に建設されており、沿海部での基地建設は海南島が初めてだ。

 中国は国産の長征ロケットを主力商品に、九〇年代から外国の商業衛星打ち上げ受注を大幅に増やしてきた。新型ロケットの投入も視野に二〇二〇年までに百基以上の衛星打ち上げを目指す。今秋には二番目の有人宇宙船「神舟6号」を打ち上げ予定だ。

 世界的な衛星需要の拡大で、人工衛星関連の市場規模は年間で一千億ドルとも推計される。こうした中で、中国の衛星打ち上げ数も、一昨年に七回、昨年は八回だったのが、今年は十八回と予測され、一回の費用が五千万ドルとされる打ち上げ受注競争で中国は参入を強めている。

 しかし、軍事利用に目を向けると、国産宇宙船の有人飛行計画で、神舟2号から同5号までに偵察撮影が可能な赤外線カメラなどが搭載されていたと指摘される。イラク戦争以降、中国は宇宙空間の戦力化と衛星による情報収集に特に力を入れているという。

 宇宙部隊の創設提言は、北京の軍事筋が明らかにした。中国軍の熊光楷副総参謀長も、これまでの国内講演で陸海空軍に宇宙、電子を加えた「五次元一体の統合作戦」を指摘していた。