2004-08-25 安全設計を重視する宇宙船「Liberator」がミニチュア版でテスト飛行

米HARC(High Altitude Research Corporation)は、独自に開発を手がける宇宙船「Liberator」のミニチュア版(1/4スケール)によるテスト飛行が順調に続けられていることを明らかにした。今後はコントロールシステムの自動制御による無人宇宙飛行の実現に向けて、機体の改良が進められる。

米HAL5(Huntsville Alabama L5 Society)が主導したとされる「HALO(High Altitude Lift-Off)」飛行プロジェクトをベースに誕生したというHARCは、Liberatorに先がけて、高度80,000フィート(約24,400メートル)の上空へと気球で運ばれ、そこからロケットエンジンに点火して宇宙空間を目指す宇宙船「BLRV(Balloon Launched Return Vehicle)」の研究開発に取り組んでいたようだ。低コストで宇宙飛行を成功させるには、このような空気抵抗が少ない上空からの打上げスタイルが好ましいと説明されていた。

しかしながら、HARCが現在、US300万ドルに上る研究開発資金を注ぎこむとされるLiberatorは、海に浮かぶ船上からの打上げにより、宇宙空間を目指すことになっているという。打上げに使用される後部ロケットは上空で切り離され、3人を乗せた先端のロケットカプセルのみで高度100キロメートルの宇宙空間まで到達予定。大気圏内への突入後、パラシュートが開いて機体は海上へと安全に着水する仕組みになるようだ。

すでにHARCは、米X PRIZE Foundationが主催する、民間機によって初の宇宙旅行を目指す「Ansari X Prize」コンテストへの正式エントリーを果たしているという。US1,000万ドルの賞金獲得がかかる同コンテストには、米Scaled Compositesが中心となるAmerican Mojave Aerospace Venturesチームが、独自に開発した宇宙船「SpaceShipOne」を来月29日に打上げる計画をアナウンスし、優勝に王手がかかった状況ではあるものの、Liberatorの研究開発チームを率いるTim Pickens氏は、実は先日までSpaceShipOneのチーフエンジニアとして開発プロジェクトに携わっていた経歴を有するとされている。

SpaceShipOneに大きく先を越された形ではあるが、Liberatorは、安全性の面で上を行くとのアピールがなされる。乗員を運ぶ先端のロケットカプセルは、後部の打上げロケットに何らかの異常が見られた場合でも、直ちに切り離しを行って単体でも安全に地上へ帰還できるように仕上げられるという。もしもロケットカプセル部分が深刻な問題を抱えたり、パラシュートが開かなかったりした場合には、乗員は速やかに機外へと脱出し、自分でパラシュートを開いて地上を目指せるような設計も施されるようだ。

ミニチュア版のテスト飛行に続き、Liberatorの実機を使用する無人宇宙飛行の実現に向けたコントロールシステムの開発も順調に進んでいることが明らかにされており、今後の展開に期待が高まっている。(PCWEB)