2004-06-21 日本の宇宙産業、宇宙技術の防衛部門への応用を期待

経団連は日本の宇宙技術を防衛庁が利用することを禁じた35年前の議会決議を変更するよう、議会関係や省庁に働きかける予定である。経団連宇宙開発利用推進会議計企画部は宇宙関連企業70数社が参加しており、谷口一郎三菱電機(株)代表取締役会長を委員長に据えているが、6月22日に「宇宙開発利用の早期再開と着実な推進を望む」と題した提言を発表した。経団連の宇宙エネルギー技術政策グループの井上タカシ氏は、この提言の中で、宇宙分野でも防衛や国家安全保障に関連する技術開発を容認するよう求めている。

1966年5月19日、国会は先端的宇宙技術を軍事目的に利用することを禁じる法律を承認した。商業利用されている技術は軍事に利用することは出来る。例えば衛星電話は先端技術とはもはや認識されないために軍事利用することも許可されている。井上氏は宇宙技術の利用を防衛目的にも利用できるよう法律を改正すべきを認識している。日本以外の国々ではすでに宇宙技術の軍事利用は一般的となっており、他国と肩を並べたいとしている。

現在日本が運用している情報収集衛星は防衛庁が運用しておらず、内閣府が運用しているために法的には問題は無いが、基本的な目的は北朝鮮の監視であり、解像度も1メートルとなっている。この解像度はすでに商業サービスとして入手可能である。しかしながら、次の情報収集衛星は技術的には違法である。というもの米国が中心となって進めているミサイル防衛構想に組み込まれることになる。

法律が改正されると、防衛庁は今後のスパイ衛星の運用が可能となり、純粋に防衛目的で弾頭ミサイル防衛も可能となる。また、準天頂衛星の技術的違法性も解決される。日本の宇宙法に関する専門家の一人である慶応大学総合政策学部青木節子教授は、経団連や企業はこの問題には慎重にアプローチしていると指摘してる。日本が厳格に宇宙開発を平和目的に制限していたが、1985年の中曽根内閣の時代にこの考え方を修正し、防衛庁が商業衛星通信の利用や商業衛星画像の購入を許可することとなった。教授は1969年の国会決議をより理にかなった方向に修正することを支持する立場を取っているが時間がかかるだろうと指摘している。

経団連の提案に関係し、三菱重工業宇宙システム部長である小林ミノル氏とのメールによるインタビューによると、日本は宇宙技術を防衛のみならず、日本の商業宇宙ビジネスに門戸を開放する必要があると現状を説明している。宇宙は情報通信という意味では更に重要な分野となっている。そのために国会決議の修正は歓迎するし宇宙が国家の防衛能力の強化に全面的に利用されることを期待すると述べている。特に現在の法律だと三菱も他の企業も構成の宇宙製品やシステム、例えばH-2Aロケットの二段目LE-5エンジンなどを輸出することも出来ない。輸出規制は「平和目的だけ」の考え方からきているが日本の航空宇宙産業成長の妨げにもなっている。

経団連としては、法律をより広くとらえるように修正を加えるか新しくするよう、議会関係者に働きかけている。正確な内容は正式には決まっていないし今後の予定も未定のままだが、自由民主党の強い支持を得ていると考えている。経団連としてはミサイル防衛システムが整備される2−3年後までに決議を変更する方向で活動していると、井上氏が述べている。(スペースニュース:スペースレフ要約)

(編集者コメント:世界の宇宙開発の方向性が、中国、ロシアの自由経済参入、冷戦構造終焉によって大きく変化し、民間企業の積極的参加と安全保障への宇宙利用がトレンドとなっている中、旧来の体制を保持しようとする日本の宇宙開発体制に、日本宇宙産業の「いらだち」が、今回のコメント発表につながっていると思われる。米国航空宇宙局:NASAも構造改革にはこれまでも苦慮しているし失敗もしている。)