2016-11-14 トランプ氏の壮大な宇宙計画とは

未来のドナルド4世が火星にトランプタワーを建てるかも?

(筆者のマーク・R・ホイッティントン 氏はテキサス州ヒューストン在住の著述家)

 ドナルド・トランプ氏は宇宙政策で選挙に勝ったわけではない。宇宙政策を持っていたことに気付いていた有権者もほとんどいなかっただろう。だが仮にトランプ政権がこの政策案を実行に移せば、航空宇宙局(NASA)は一世代に一度あるかないかの変貌を遂げる可能性がある。その内容には疑問が残る部分も多いが、トランプ氏は米国を「最後のフロンティア」に向かわせる野心的な宇宙政策を持っている。

 トランプ氏の助言者であるロバート・ウォーカー氏とピーター・ナバロ氏は、先月発行された米宇宙専門誌「スペースニュース」にこう記している。「今世紀末までに太陽系の星すべてを対象に有人探査を行うことをNASAの目標とすべきだ」

 トランプ氏は自分の孫が生きている間に木星や土星の衛星や冥王星にさえも宇宙飛行士を立たせたい意向のようだ。現行政策が目指しているのは火星までの片道切符だが、トランプ氏はそれよりはるかに深遠の宇宙を目指している。

 両氏によると、トランプ氏が想定しているのは官民パートナーシップ(PPP)だ。例えば、国際宇宙ステーション(ISS)を「国際貢献と民間物資を利用した補給が支える官民共同施設」に変えようとしている。民間の専門知識と柔軟性を活用すれば、NASAだけでは不可能な多くのことが達成できるだろう。トランプ政権はNASAや米軍、民間との連携を図るために、マイク・ペンス次期副大統領がトップを務める宇宙政策協議会を設立する計画だ。

 だがウォーカー、ナバロ両氏は大事なことを忘れている。NASAは2030年代までに火星へ行くという現在の計画を続行するのか。それともまず月に戻るのか。民間協力はどの程度見込まれているのかといった内容だ。

 現在進められている他の構想にも触れていない。スペースシャトルの代替として開発中の新型宇宙船「オリオン」や大型ロケット「スペース・ローンチ・システム」、小惑星を月軌道まで移動させて有人探査を行う「アステロイド・リダイレクト・ミッション」といったプロジェクトのことだ。

 トランプ氏が大統領に就任すれば、これらのプロジェクトを中止し、民間による代替案を追求するのか。オバマ大統領の最大の失敗のひとつは、連邦議会議員からの訴えを無視し、ブッシュ前大統領の宇宙計画「コンステレーション・プログラム」を突然中止したことだ。これは2020年までに再び月へ行き、時期は未定ながら火星にも宇宙飛行士を着陸させる計画だった。

 トランプ次期大統領は政策通ではないものの、野心家であり、壮大なプロジェクトを好むことは間違いない。トランプ氏は米国の宇宙計画を練り直し、向こう数十年にわたる「再開発」計画に仕立て上げる可能性がある。ひょっとすると未来のドナルド4世が火星にトランプタワーを建てるかもしれない。(WJ)