2016-02-18 羽生田鉄工所、宇宙ごみ除去に参画 衛星ベンチャーと協力

圧力容器など製造の羽生田鉄工所(長野市)は、シンガポールに本社を置く衛星ベンチャーと協力し、役割を終えた人工衛星やロケットの部品・破片といった「スペース・デブリ」(宇宙ごみ)除去のプロジェクトに参画した。2018年初めごろまでに打ち上げを目指す新たな衛星を使って、宇宙開発を阻害するデブリを大気圏に落として燃やす構想。同社は衛星の部品の成形を担う。

 デブリは目に見えないほど微細なものから1メートル超のものまで大小さまざま。1億個以上あるとの推計もあり、秒速7?8キロの猛スピードで宇宙空間を移動し、人工衛星との衝突などが懸念されている。

 デブリ除去に取り組むのは、シンガポールに本社を置くアストロスケール社。日本人を中心に立ち上げた衛星ベンチャーで、都内に日本法人と開発拠点がある。

 デブリ除去には「ADRAS(アドラス)―1」と名付けた衛星を使う。親機は幅と奥行き60センチ、高さ120センチの直方体のような形状で、重さは120キロほどある。子機を放出してデブリに密着させてデブリの飛行速度を緩め、引力により徐々に高度を下げて大気圏に突入させる。

 現在、試作段階で、東京理科大、九州大などの研究者や中小企業などの約50人が開発に協力。今春以降、試験のための実機開発に着手する。羽生田鉄工所は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の圧力加工装置製造などの技術を生かし、親機に搭載する太陽電池のパネル部分の成形を担当する。

 羽生田豪太社長は「人類が宇宙に出て行く以上、使命として誰かがやるべきだ」と強調。同社は14年に打ち上げた信州製超小型人工衛星ShindaiSat(シンダイサット・愛称「ぎんれい」)にもCFRPを供給した。炭素繊維市場の拡大も見据えて実績を積み、技術の向上を図る。

 アストロスケール日本法人の伊藤美樹社長は「衛星に電力供給する太陽電池パネルは振動などに耐える丈夫さと軽さが必要。羽生田鉄工所の力も借りてデブリ除去の成功事例を作りたい」としている。(信毎Web)