ソ連の技術者、ユーリ・アルツナノフ(Yuri Artsutanov)が1960年に「宇宙行き電気機関車」という概念を思いついたとき、実現するまでに200年はかかるだとうと予想していた。50年後の現在、81才になって彼はより楽観的になっている。彼が予想するに、最初の宇宙エレベータが実現するまでには30年程度だろうと予想している。
マイクロソフト社の敷地内(キャンパスと呼んでいる)で行われた「2010年宇宙エレベータ会議」での話題をまとめました。
宇宙エレベータの基本アイディは、超強度のリボンに沿って、人やペイロードを高度10km程度まで輸送するというもの。似たような「鉄道」でもっと短いシステムを月や火星で構築する宇宙輸送軌道システムの予備システムも可能。
宇宙エレベータ支持者等は宇宙までの輸送費は現在のロケット利用の輸送費の1パーセント程度だろうと述べている。ただし、いつ、どのように構築されるかによる。
会議での一つのテーマとして宇宙エレベータ技術は、実際にエレベータが建設される前に社会に利益をもたらすかどうか、ということである。
・次世代材料としてカーボンナノチューブが宇宙エレベータ用リボンの要求条件を満たしていると考えられており、この材料は同時に防弾チョッキから航空機や宇宙船まで広範囲に応用可能かもしれない。
・エレベータはレーザー利用エネルギ移転システムによって動力が供給される必要が有る。この技術はNASAや軍事にも応用可能である。昨年、シアトルのレーザーモティブ社(LaserMotive)はNASAから9000万円の賞金を獲得した。この競技は光線のみを使用しで動力を供給する光速度のロボット開発を促進するためのもので、この競技で優勝した。
・専門家は、このリボンが地球の磁場と軌道上の宇宙デブリ(宇宙ゴミ)との相互作用に関する問題点を明確にしようとしている。このような研究は宇宙オペレーションをより安全にする可能性が有る。来年、海軍研究試験所はTEPCEと呼ばれるテザー実験を開始する予定である。この実験では無燃料推進システムを使って磁気圏の中を小型衛星がどのように飛行出来るかを実験する。
ジェローム・ピアソンは米国技術者で1975年に独自に考案した宇宙エレベータのアイディアを発表した。現在、共同研究者らとエレクトロダイナミックデブリ除去システム(EDDE:ElectroDynamic Debris Eliminator:電子の力でデブリを除去するシステム)をして知られているテザー付きのミニ衛星を開発している。彼の構想では、EDDE衛星は推進剤を使用する代りにデザーを使用して上下に移動し、巨大な網を使って宇宙ゴミを集める。或は大気圏で焼却する。宇宙で収集した金属は新しい宇宙ステーションで再利用できるし、宇宙エレベータに使用することもできる。
もしEDDEが予定通りに機能できれば、地球に磁場は宇宙の海洋となって小型船は上下や前後に移動しながら飛行することが可能となる。
ピアソンと、セントペテルスブルグから来たアルツタノフは宇宙エレベータのクリエータとしてこの会議のスターであった。しかしながら、会議全体には疑問も漂っている。このアイディアは、夢物語ではなく現実となるのは一体いつなのか、という疑問である。
ブライアン・ラブシャ(Bryan Laubscher)は「最初の宇宙エレベータができあがるまでに15年はかかるだろう」、と発言している。彼はこの会議の委員長でありOdysseusテクノロジ社の代表でもある。そして、さらに、「カーボン・ナノチューブの開発で革命的な前進がない限りは、来年には今年と同じように実現までには15年はかかるだろう、と言っているよ」とも。
ラブシャによると最初の宇宙エレベータ建造には2兆円規模の資金が必要だろうと予想している。NASAは技術開発に投資するし協力するだろうけど、実際の作業は民間ベースで行われるべきだ、としている。しかしながら、現在までの所、興味を示す民間投資家は現れていない。