2010-07-21 米Xilinx、「宇宙でもASICよりFPGAが有利」 放射線耐性や性能を高めた宇宙用途のFPGA発表

米 Xilinx社は,放射線耐性や性能を同社従来品に比べて高めた宇宙分野向けFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)「Virtex-5QV FPGA」を発表した。総照射線量(TID)耐性を同社従来品の2倍以上に高めたほか,ロジック規模は13万ロジック・セルと宇宙分野向けFPGAとして業界最高水準とする。このほか,最高3.125Gビット/秒の高速トランシーバを集積し,DSP機能も強化している。人工衛星や宇宙船におけるセンシング処理や画像処理,ナビゲーションなどの用途に向ける。現在サンプル出荷中で,2011年1~3月から65nmプロセスで量産する。既に航空宇宙関係の「複数のプロジェクトへの採用が決まっている」(Xilinx社)という。

 Virtex-5QV FPGAは,TID耐性が700kRad以上,SEU(single event upset)ラッチアップ耐性が100MeV-cm2/mg以上であるなど「非常に高い放射線耐性を持つ」(Xilinx社)という。このため,FPGA ベースのシステムの構成を,放射線対策のために冗長化する必要がなくなる。この結果,システム開発に要する期間やコストを削減できるとする。同社従来品の「Virtex-4QV FPGA」ではTID耐性が300kRadであり,競合他社品でも主流は200k~300kRadという。3.125Gビット/秒の高速トランシーバを集積することも大きな特徴である。同社従来品にもトランシーバを集積していたものの,動作保証の観点などから顧客にはトランシーバへの対応はうたっていなかった。クロック周波数は450MHzで,宇宙分野向けとしては「ASICでも対応のハードルが高い性能」(Xilinx社)を実現した。このほか,PCI ExpressやEthernetメディア・アクセスに対応するコントローラ回路をハードIPとして内蔵する。以上の改良は,FPGAのアーキテクチャと設計を見直すことで実現したという。

 Xilinx社によると,これまで宇宙分野向けでは,ロジック規模が大きい半導体の多くがASICやOTP(one time programmable)タイプのFPGAだったという。宇宙用途では,ASICの開発コストが民生機器や産業機器向けと比べて高く,回路構成の柔軟な変更を求める声も強いという。このため,「FPGAへの引き合いが強く,我々にとって今後の成長分野となる」(Xilinx社)とみる。同社の宇宙分野向けFPGAの採用事例はこれまで北米や欧州が中心だったが,ここに来て日本でも採用事例が出てきた。宇宙分野向けFPGAの従来品が,今後2~3年以内に打ち上げられる日本の人工衛星に搭載される見通しだ。「(放射線に弱いとされてきた)SRAMベースのFPGAが,日本の商用ベースの人工衛星に搭載されるのはおそらく初めて」(Xilinx社)という。(日経)