2009-07-15 SaTReC Initiative社が輸出の衛星「RazakSAT」打ち上げ成功

韓国で唯一の人工衛星開発専門企業が誕生して9年6ヶ月。本格的な人工衛星商用化の時代が開幕した。大徳所在の SaTReC Initiative社(代表パク・ソンドン)は英国のSSTL(Surrey Satellite Technology Ltd)社に次いで人工衛星を開発、軌道進入に成功させた世界で2番目のベンチャー企業となった。

7月14日午前12時37分、 SaTReC Initiative社1階の大会議室。100余名の社員が歓声を挙げた。同社が開発、輸出したマレーシアの人工衛星RazakSATが宇宙へ向かって打ち上げられたため。社員らは同社の設立初期2000年5月にマレーシアの政府出資企業と人工衛星の開発契約を締結し10年近くプロジェクトを進めてきた RazakSATの打ち上げをリアルタイムで見守った。

RazakSATはこの日突然の暴風で延期が心配されたが、12時37分ごろ太平洋上の米国領クェゼリン島から米国SpaceX社のFalcon-1発射体に搭載されて無事に打ち上げられた。そして打ち上げ後1時間ほど経過した1時 45分ごろにロケット第3段の分離を完了し、人工衛星が正常に軌道に乗ったことが確認された。

SaTReC Initiative社は打ち上げに合わせて人工衛星の初期通信のために約10名の技術陣をマレーシア現地の地上局に派遣し、衛星の初期運用に当たっている。RazakSATはマレーシア政府の出資企業であるATSB(Astronautic Technology Sdn. Bhd.)と共同開発した2.5mの解像度を持つ重量180kg(直径1.2m×高さ1.2m)の小型衛星で、マレーシアをはじめとする地球赤道面地域の環境と災害を監視することになる。

SaTReC Initiative社のパク・ソンドン社長は「RazakSATの打ち上げ成功を契機に本格的な衛星映像ビジネスに取り組みたい。今後は世界的な宇宙開発企業となることを目指す」と抱負を述べた。なお7月25日にはもう一台の韓国製人工衛星が打ち上げられる。SaTReC Initiative社が輸出したDubaiSatがウクライナのYSDOが製作したDnepr発射対に乗せられてカザフスタンのバイコヌールから打ち上げられる予定。(大徳

(編集者コメント:韓国の宇宙開発は日本よりずっと後発だ。しかし日本では大手宇宙企業が中心で、SatRecのような宇宙ベンチャー企業がまったく誕生していないし、芽さえも出ていない。しかも衛星を輸出するSatRecに対し、大手を含めた日本の宇宙企業は輸出は部品以外は実績がほとんどゼロだ。 日本から見るとSatRecの実績は快挙としか言いようがない。しかし、世界の産業では、SatRecのような展開はごく普通に行われ、ごく普通にベンチャー企業が誕生し、ごく普通に海外取引を行っている。
 一方で、議論を呼んでいる国家予算7億円プロジェクトの「まいど」衛星。巨額の資金が投入されたにもかかわらず、小型衛星企業として起ち上がる気配もない。まいどプロジェクトとSatRecを比較することで、日本からベンチャー企業が起ち上がらない背景、理由がが明らかにされるかも知れない。
  しかし、日本から見ると、「どうしてそんなことが出来るの?」と不思議でならないのである。これは、日本の産業文化というか、歴史がそうさせているのかも知れないが、日本企業は国際的なビジネスを展開するために官側の指導とか後押しがあって初めて動き出す感がある。携帯電話の場合も、世界レベルに合った1世代前の技術でサムソンが世界の携帯市場で活躍しているが、日本はNTTを中心に、最先端技術ばかりを追いかけ、結果的に世界市場からは取り残されてしまい、国内市場への海外からの進出は少ないもの、海外市場では完全に孤立している状態だ。つまり、NTTという独占企業体が安易に独占状態の国内のみで競争を演じ、海外戦略がないのである。潤沢な資本で市場の独占を実現し、髙純益を謳歌しているNTTが国際競争に打って出ないで、誰が国際市場で競争せよと、政府は考えているのだろうか。裕福な人間ほど、リスクは犯したくないもの。大企業は裕福だからリスクは犯さない。ベンチャーはリスクもいとわないことを美徳するが資金がない。結局公的資金の投資先の不適切さが根本にあるのだろう。公的資金配分の哲学、配分先決定の間違った評価方法、公的機関の間違った期待、あるいはそもそも公的資金を民間に投資することの考え方そのものが間違っているのかも知れない。

数年前に3人で設立された中国電池メーカのBYD社、電気自動車販売で華々しく登場し急成長中だ。エンジン自動車生産は無理だが電気ならばベンチャーでも可能で世界中で30社以上が販売中だ。同じく米国のロケット開発会社で有名になったElon Musk。彼が率いるシリコンバレーベンチャーの1つ、Tesla Motorsが電気自動車のRoadStarを発売中だ。成功しつつあるベンチャー企業の仲間意識は強い。その光景は海外の展示会に行くと如実に表れる。多くの海外ベンチャー企業に挨拶回りする日本人は超大手企業である。そのため、海外では有名な話で、「海外とは異なり、日本の中小企業はどこかの大手企業に必ず属していれば信用できるが、属さない独立系中小企業は信用できない。」と見られているのである。そのため、日本の中小企業が挨拶回りする際に相手から聞かれるのが、どこの企業群に属しているのか、だ。ここに日本の産業構造の特徴が現れている。つまり超大企業をトップとするピラミッド構造が完結していて、それ以外の企業が地面から新しい芽を出すことさえも不可能となっている。地面が完全に舗装されているのである。水も浸みてこない(投資や公的資金も落ちてこない)状況である。

一方、日本というと財閥系超優良企業の三菱自動車が軽量電気自動車を早速発売。国も支援するし地元も支援する。ここで疑問だ。経済大国第2位の日本からは電気自動車のベンチャーの声もまったく聞こえずそんな雰囲気さえも生まれず、逆に世界ではベンチャーで生産可能な電気自動車を世界の「三菱」が超小型自動車を生産することの意味だ。世界のベンチャー企業が成功しようとしているアイディアを日本の超大手企業がすぐに真似することの精神構造が、日本の将来性に疑問を持たざるを得ない。挑戦的精神の重要性が消えつつある。あるいは挑戦できる道筋が消えてしまっている。別の見方をすれば、それだけ超大手企業も次の新ビッグビジネスをリスクを負いながら開拓する余裕も無いとも言える。手っ取り早く収入になる海外の成功例を真似することでリスク無しで成功しようとする大手企業の切羽詰まった状況を示しているのかも知れない。大企業が切羽詰まっているとすると中小企業は切り捨てられるのを待つことになる。

一生懸命勉強し、一生懸命仕事をし過ぎて、視野が狭くなっているのかも知れない。戦後の混乱期に誕生した松下、ソニー、トヨタの時代は日本には二度と到来しないのだろう。当時は自由に企業を立ちげ、オートバイの企業もホンダを含めて20社以上あったとか。当時と今と何が違うのだろうか。いまの日本で自由闊達な状況が再度生まれることが想像できない。多くの中小ベンチャー企業が競って開発し、成功する可能性に掛け、夢を追いかける産業がそもそも存在しない。しかし自動車、家電に続く大きな産業は生まれていないし、シーズさえも明らかになっていない。日本は次世代において何で食べてゆくのだろうか?主要産業を何にするのだろうか、明確な国家戦略が存在しない。

そろそろ明治時代から続いた「真似」産業は行き詰まっており、日本だけが突出して真似が出来る技術が存在しないし、日本が真似できる技術は他の国でも真似できる状態だ。大手企業は大資本が強みだ。大資本が有利に働くのは大資本が必要な技術開発であり販売戦略だ。海外のベンチャー企業でも作れる製品を日本の超大手企業が参入するのであれば、市場を明け渡し、ベンチャーの活躍の場にすべきである。
 米国はいまだに世界の工業生産国だ。トップ100には日本は8社程度だが、米国は40社以上が入っている。しかも日本の企業は常連メンバーであるが、米国には新興企業が多く含まれている。ここにも日本の将来の産業に不安を感じずにはいられない。日本から新規産業が起ち上がらないのである。危機的状況だ。
 米国人がずっと以前からもっている考えは、「米国が考え、日本人がそれを作り、中国人がそれを売る。これがもっとも効率的な商売だ。」ということがよく言われていた。真実みが出てきたようだ。)(AI)