2007-09-04 衛星を宇宙に打ち上げ事業H2Aロケット:三菱重工など13日に発射

 H2Aロケット13号機が十三日、宇宙航空研究開発機構種子島宇宙センターで打ち上げられる。今回から三菱重工業が中心となり、衛星を宇宙に運ぶビジネスとして打ち上げを行う。日本のロケット開発の節目だ。搭載する月周回衛星「セレーネ(愛称・かぐや)」も、世界的に月探査への関心が高まる中で“アポロ以来の計画”と成果が期待されている。 (名古屋経済部・長坂誠、科学部・大島弘義)

 これまで、国が開発して打ち上げてきた主力ロケット・H2Aの技術は宇宙機構から三菱重工業に移管。“民営化1号機”となる13号機は機体に同社のロゴマーク「スリーダイヤ」が入り、種子島で最終の打ち上げ準備作業が続いている。

 同社の西岡喬会長は八月下旬、名古屋市で開かれたセミナーで講演。「当社の航空宇宙産業の受注五千億円のうち、宇宙は4%。いつまでも4%というつもりはなく、世界の市場から注文を取ってくる」「再使用型ロケットの開発も検討する」と意気込みを示した。

 しかし、衛星打ち上げサービスをビジネスとして軌道に乗せるには課題も多い。まず、コスト削減。H2A一機当たりの打ち上げ費用は約百億円。七十億円の欧米や、五十億円といわれるロシアとは開きがある。

 H2Aには打ち上げる衛星の重量に応じて補助ロケットのタイプと数が異なる四機種があった。同社はこれを二機種に絞り、製造面で効率を高めるほか、打ち上げ準備では最終リハーサルを廃止するなど工夫する。

 営業活動では同社独自の営業チームを発足させる一方、欧州宇宙産業大手のアリアンスペース(本社フランス)と受注先の開拓で提携。実績ある同社の営業力にも期待している。

 受注に直結する信頼性は、成功率こそ欧米並みの92%に達している。だが、打ち上げ数が十二機(成功は十一機)と少なく、今後、着実に成功を重ねるしかない。

 一方、宇宙機構のかぐやは「アポロ以来の本格的な月探査」(宇宙機構)と位置づける。一九六〇年代から七〇年代のアポロ計画は人を月に送り、表裏の構造が大きく異なることを明らかにした。だが、宇宙機構の佐々木進教授は「月の起源のシナリオはほとんど分かっていない」という。

 最も有力なシナリオが「ジャイアント・インパクト説」。誕生間もない地球に、火星くらいの大きさの天体が衝突し、その破片が集まって月ができたという考え方だ。

 かぐやは十四個のセンサーを搭載。高度百キロで月を回りながら、蛍光エックス線分光計が表面のアルミニウムやケイ素などの元素組成を測定する。また、レーダーなどで地下数キロまでの構造や磁場も調べる。このほか二機の子衛星を放って重力を精密に測るなど、幅広い観測で月のなりたちの解明に挑む。佐々木教授は「過去の探査機に比べて十倍から百倍の性能がある。月の起源について明確なモデルを得て、地球型惑星の進化の研究にも進歩をもたらしたい」と話している。

 かぐやは当初、二〇〇三年に打ち上げ予定だったが、ロケットの失敗などで遅れた。この間、米国や中国、インドなどが月探査計画、将来の月利用や月面基地建設の構想などを表明。注目度がむしろ高まる中で、先陣を切ることになる。(中日新聞)