2018-02-07 ロシアの宇宙ロケット企業が、宇宙遊泳体験を販売 

ニューズウェイーク日本語版 松岡由希子

<ロシアの宇宙ロケット企業エネルギアが、国際宇宙ステーション(ISS)での宇宙遊泳体験を富裕層向けに販売する計画を明らかにした>

ロシアで宇宙ロケットの開発を手がける企業エネルギアは、2018年1月、上空350キロメートルにある国際宇宙ステーション(ISS)から青い地球を眺めたり、宇宙遊泳を体験できる宇宙観光サービスを富裕層向けに販売する計画を明らかにした。現在、宇宙開発全般を担当するロシアの国営企業ロスコスモスにおいて、その計画内容が審査されている。

一般の観光客をISSに届ける新たなモジュールを開発

実験施設と太陽電池パネルを備えたISSのモジュール「NEM-1」の建設をすすめているエネルギアでは、一般の観光客をISSに届ける新たなモジュールとして、「NEM-1」の設計をベースとする「NEM-2」(仮称)を開発。

快適性にも配慮されたこのモジュールは、4名から6名乗りで、2立方メートルの個室が4室用意されているほか、トイレが2カ所設置され、インターネットへの接続環境も整っている。

ロシアと米国との異色な共同プロジェクトとしても注目

「NEM-2」は、ロシアと米国との異色な共同プロジェクトとしても注目されており、「NEM-2」に使用する特殊な科学機器の供給や提携について、米国の大手航空宇宙機器開発メーカーのボーイングが関心を示しているという。

なお、「NEM-2」に滞在する宇宙旅行の代金は1億ドル(約110億円)程度となる予定。エネルギアでは、年間の旅行客数を5人から6人程度と予測しており、7年半で損益分岐点に達する見込みだ。

「シルク・ドゥ・ソレイユ」の創業者もISSに滞在

ロシアではこれまでにも民間人の宇宙旅行を実施している。2006年にイラン系アメリカ人実業家のアニューシャ・アンサリが民間人の女性ではじめて宇宙を旅行したほか、2009年には、カナダのパフォーマンス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の創業者であるギー・ラリベルテが、12日間にわたってISSに滞在した。

近年の宇宙開発においては、欧米の実業家も積極的に関与している。ヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソンが率いる「ヴァージン・ギャラクティック」では、最大8人乗りの商用宇宙船「スペースシップ・ツー」を開発。また、アマゾン・ドット・コムの共同創業者ジェフ・ベゾフが創設した「ブルーオリジン」では、2017年12月、民間人を宇宙に届ける「クルー・カプセル2」の飛行実験を初めて実施した。

まだまだ高価ではあるものの、民間人が宇宙で滞在できるようになる日が着実に近づきつつあるようだ。