2016-04-16 「宇宙ホテル」国際宇宙ステーションに取り付け

一般の人でも宇宙に滞在できる、いわゆる「宇宙ホテル」の試験機が、日本時間の16日午後6時半すぎ、国際宇宙ステーションに取り付けられ、今後2年間、安全性などを検証する作業が行われます。

国際宇宙ステーションに取り付けられたのは、アメリカの民間企業、ビゲロー・エアロスペース社が開発した「宇宙ホテル」の試験機で、日本時間の今月9日、アメリカ南部から無人の宇宙輸送船に収納され、打ち上げられました。

そして日本時間の16日午後、試験機を輸送船からロボットアームを使って取り出す作業が始まり、午後6時半すぎ、国際宇宙ステーションに取り付けられました。
この試験機は、輸送船の中では全長と直径がいずれも2メートル余りの円柱形でしたが、国際宇宙ステーションに取り付けられたあと空気を注入することで、風船のように膨らみ、全長は2倍近い4メートルに、直径も1.4倍近い3.2メートルまで広がります。

実際に試験機を膨らませる作業は来月下旬に行われる予定で、今後2年間、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士が定期的に中に入るなどして、宇宙を飛び交う放射線を防ぐ性能や内部の温度変化など、安全性を検証します。

開発した会社は、この試験機を発展させて、「宇宙ホテル」の開発につなげたいとしていて、民間企業による宇宙施設の実現に結びつくのか注目されています。(NHK)


Wired

ビゲロー・エアロスペースは、空気を入れることで膨張させて使う宇宙用住居(モジュール)を製作している宇宙ヴェンチャー企業だ。同社が開発した膨張式モジュールは4月8日(米国時間)、スペースXが打ち上げたロケット「ファルコン9」と「ドラゴン宇宙船」によって、国際宇宙ステーションへと運ばれた。

そして11日、ビゲロー・エアロスペースは、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)との提携を発表。両社は共同で、居住可能な膨張式の宇宙ステーション「B330」を開発し、2020年に運営開始するという。

ビゲロー・エアロスペースは、互いに連結可能な膨張式モジュールが、科学研究施設やほかの惑星での住居、旅行者の滞在先に使用される未来を構想している。「わたしたちは、ディズニーが(このモジュールを使って)『ディズニー宇宙ステーション』を実現するのを見てみたいと思っています。それは素晴らしいことでしょう」と、創業者ロバート・ビゲローは語る。

ビゲロー・エアロスペースは1999年、ビゲローが自分のホテル事業の利益とノウハウを「宇宙ホテル」へ投資しようと決心して設立された(日本語版記事)。

その後、「Genesis I」および「Genesis II」と呼ばれるプロトタイプが2006年と2007年に開始された。そして4月8日、ポップアップ式の膨張式アクティヴィティ・モジュール「BEAM」(Bigelow Expandable Activity Module)が、国際宇宙ステ―ションに運ばれた。

ビゲロー・エアロスペースはすでにNASAやスペースX、ボーイングと提携を結んでおり、これにULAが加わることになる。

ULAは2006年、業界大手のロッキード・マーティンとボーイングによる合弁事業として、両社のロケット技術を統合するかたちで設立。ULAにとって今回の提携は、久しぶりの明るいニュースだ。同社は最近、ロケット「Atlas V」にロシア製エンジンを搭載している(日本語版記事)ことに関して、米国議会で非難を受けている。さらに、イーロン・マスクCEO率いるスペースXは宇宙へ物資を数百万ドル安く運搬でき、最近、米国空軍との契約を勝ち取っている(ULAは今回の入札には参加していない)。

一方、ULAの打ち上げ成功率は100パーセントで、A+の評価を受けているが、スペースXはそうではない。競争が激しくなりつつある航空宇宙業界において、ULAは、新興企業と協力関係を築くことが(そして、8日に発表した375人の「人員整理」といったコスト削減対策が)、市場での生き残りを後押しすると期待しているようだ。

いずれにしろ、ビゲロー・エアロスペースとULAとの提携により、いくつかの重要な事業が前進するのは明らかだ。ディズニー宇宙ステーションが確実に誕生するかはわからないが、次に生まれる「地上の楽園」が地球上でないとしたら楽しそうだ。