2011-08-08 日本、有人宇宙ミッションに向けた道筋

JAXAエンジニアは2025年の有人宇宙ミッションを打ち上げる予定で、SpaceXのドラゴンカプセルと同程度の大きさのカプセルの開発に取り組んでいる。過去10年間で宇宙ステーションに打ち上げ、HTVコウノトリモジュールも打ち上げに成功した。そして地球帰還モジュールとなる開発中のHRV(HTV return vehicle)物資輸送カプセルも人間を運ぶための設備を備えている。JAXAとしてはHRVを有人輸送に向けた宇宙船の技術実証として利用しているようだ。

設計者としては地球帰還カプセルを有人カプセルに代替する考えを否定している。このカプセルは「コウノトリ」の非与圧貨物室に適合するように設計されているし2009年以来運用可能となっている。

開発予算は無いし、有人宇宙ミッションは宇宙開発委員会の承認を得るには程遠い状態である。もし帰還貨物カプセルが無事に地球に戻らない場合は、日本の有人宇宙プログラムはさらに困難となりほぼ不可能となる。

プログラムマネージャのスズキ・ユウスケ氏は次のように語っている。「3.11地震の前に、2017年度に最初の打ち上げを実施するスケジュールで作業を進めていた。もし予算が付けば2017年までに実施可能である。」 スズキ氏は、コストについてはまずは政府に提出すべきと考えるので公開は避けた。

HRVのミッションはISSと連携する作業となる。ISSは2020年に運用を停止するが、HRVの開発が遅れた場合、実際に打ち上げられる機会は少なくなるか消滅することになる。JAXAは最初の有人ミッションを2025年に実行することを目指していると述べている。

有人ミッションを目指す理由として、スズキ氏は、人類は遅かれ早かれ宇宙に進出するものであると主張している。先進国の一つとして日本は宇宙開発において重要な役割を果たすべき、とも述べている。しかし疑問は、「なぜ行うのか?」ではなく、「いつやるのか」である。

HRVにしてもそれ以上の開発にしても有人宇宙船開発はJAXAにとってより挑戦的な技術範囲であり、ほとんど経験がない。ハヤブサ小惑星ミッションでサンプル持ち帰り探査機を設計した経験はある。日本のISSモジュールである「きぼう」モジュールの生命維持システムの設計も行った。

HRVはHTV-Rと呼ばれる宇宙船の一部であり、「コウノトリ」の最低限の変更を行ったものである。HTV-Rはコウノトリの推進モジュールを使い、IHIの4基のメインエンジンを使い、28台のリアクションコントロールスラスタを使い、そしてその上にアビオニクスモジュールも使い続ける。非与圧貨物用の開放型輸送モジュールはそのまま維持され、アビオニクスモジュールにフィットさせている。しかし帰還カプセルはコウノトリの50立方メートルの輸送部分に取って替わる。カプセルと非与圧輸送部分とカプセルの間には新しいアダプタが挿入される。

カプセルは、初期の有人カプセルでは一般的だった4人乗りである。ちなみにドラゴンは7人乗りである。

三菱重工業はコウノトリの主契約企業であり、HTV-Rの大部分の生産を担当することになる。三菱重工業、IHIエアロスペース、三菱電機はHRVの予備設計を終了している。

現在の設計では、カプセルの直径は4.2メートルでコウノトリとほぼ同じである。長さは3.3メートル。円錐形面の傾斜角は20度。アポロ司令船モジュールとオリオン宇宙船は32.5度である。傾斜角を少なくした理由は宇宙船の質量を少なくしながら目標の内部容積を確保するためとしている。内部容積は16.7立方メートルを設計目標としている。

HTV-Rの打ち上げ容量はかなり大きいがコウノトリの非与圧貨物室はそのまま維持される。コウノトリの部分を含んで宇宙船全体で運ぶことができる最大の積載量は3.1トンである。打ち上げロケットはH-ⅡBが使われる予定で、H2A202ブースタを二基備えており、低軌道まで10トンを打上げることができる。

コウノトリのシステムを保持しながら設計者は設計コストを下げるだけではなく、手持ちの資源を再利用することができ、地上設備、ロケット、宇宙ステーションとのインターフェースは変更する必要がない。

宇宙船にはステージングは無く、全てのコウノトリセクションがISSまで輸送されるが、ステーションを離脱して大気圏突入する際にそれらは破棄される。

カプセルはISSのノード2にドッキングする。アプローチとドッキングにはコウノトリミッションで実証された技術を使う。

低い面傾斜角(テーパ)を選択したカプセルの設計者は熱シールドの大きめの重量を受け入れた。傾斜角が大きくなると再突入の際の揚抗比が向上し、より平坦な軌道が可能となり熱応力も低くなる。熱シールドはそれほど厚くする必要がなく、操作性や着陸範囲も有利となる。設計チームは揚抗比0.3を目指している。参考までにアポロ司令船モジュールの揚抗比は0.37である。風洞実験は始まっている。

亜音速飛行に遷移する間の安定性維持はとくに難しい。リアクションコントロールシステムの点火で発生する気流の妨害は安定性に悪影響を与える。

熱シールドの材料開発と大きくて正確な部分の製造は日本にとって大きな挑戦となる。米国は日本に対して研究室での利用ということで少量の材料は提供するだろう。しかし利用可能なレベルの十分な材料の提供は、戦略的にセンシティブな材料であることから難しいだろう。日本自身でHRV熱シールドを開発する必要がある。

HTV断面図

HRV