NASA(米航空宇宙局)の水星探査機メッセンジャーは米国時間2011年3月17日夜、小さな水星の周回軌道に投入された史上初の探査機となった。
2004年に打ち上げられた水星探査機メッセンジャー(MESSENGER:MErcury Surface, Space ENvironment, GEochemistry, and Ranging)は、1975年にNASAのマリナー10号がフライバイを行って以降、水星に接近した初めての探査機だ。
過去6年半の間、メッセンジャーはいわゆる重力アシスト(フライバイ)によって自らを水星の軌道に乗せる準備を進めてきた。その方法は、地球、金星、そして水星自身の引力を利用したフライバイによって、探査機の増速と軌道の変更を行うというものだ。
米東部標準時2011年3月17日午後8時45分(日本時間18日午前10時45分)、メッセンジャーは“噴射”、すなわちメインスラスター(制御エンジン)を噴かして“ブレーキを踏む”ことで減速し、水星の引力に捕えられた。
メッセンジャーが軌道投入のマニューバー(方向・姿勢転換)を実行する間、メリーランド州にあるジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)のミッション管制チームは、1億5500万キロ離れた地上から探査機を監視した。その後、17日午後9時10分(日本時間18日午前11時10分)には、軌道投入が成功したことをチームが確認した。
これまでのフライバイで噴射を行ったときと同様に、チームはメッセンジャーが軌道投入に失敗した場合の不測の事態にも備えていると、メッセンジャーの科学ミッションの主任科学者であるショーン・ソロモン氏は3月15日の記者会見で語っていた。
しかし、バックアップ計画は「すぐに状態を回復させるものではなく(中略)ミッションのタイムラインは大幅な変更を余儀なくされるだろう」とソロモン氏は述べていた。すべてが計画どおりにいけば、メッセンジャーは2011年4月初めまでにデータの収集を開始する。
今後1年に及ぶミッションの間、メッセンジャーは水星周囲の軌道を24時間に2度ずつ回る。これは1日に2度フライバイを行うのに等しく、探査機に搭載されたカメラや分光器のデータが大量に送られてくる予定だ。
軌道に乗ることで、探査機は例えば水星の表面全体を「超高解像度の画像」で撮影することが可能になると、ワシントンD.C.のカーネギー研究所に所属するソロモン氏は話す。
1973年に打ち上げられたマリナー10号は水星に接近している間、クレーターに覆われた惑星表面の45%しか撮影できなかった。メッセンジャーが過去3度行ったフライバイでも全体像を捉えるまでには至っていない。
メッセンジャーはそのほか、水星の大気と内部構造、磁場環境も調査する予定だ。水星の磁場環境は、水星と太陽との密接な相互作用によってめまぐるしく変化している。
「近くを通り過ぎるわずかな時間にスナップ写真を撮るのでなく、その場にとどまることで得られる成果は途方もなく大きい」とソロモン氏は語った。 (ナショジオ)