2004-06-25 地震前電磁気異常、宇宙から解明 仏で人工衛星打ち上げへ

 大地震の前に、電波や地電流などの電磁気現象に異常が現れるのはなぜか――。フランス国立宇宙研究センターは今月、そのメカニズムを探る専用の人工衛星「DEMETER」を打ち上げる。電磁気を使った地震予知研究は日本が世界をリードしており、今回の打ち上げにも日本の研究成果が大きく影響しているという。こうした研究は国内では“冷遇”されているが、海外で花を咲かせる可能性が出てきた。

 フランスは現在、目的を絞った小型の衛星を多数打ち上げる研究計画を進めている。DEMETERはその第1号機で、29日に打ち上げる予定。重量約100キロで、磁力計や電界計、プラズマ測定装置などを積む。高度約700キロを飛行して約100分で地球を一周し、地震時の電離層の状態などを観測する。

 一方、日本や台湾、ロシア、メキシコなどの7カ国・地域では、研究者が電波や地電流などと地震の関係を探る観測を続けている。同じ地震について、地上と上空双方のデータを検討し、電磁気現象に異常が起きるメカニズムの解明を目指す。衛星は2年以上観測を続け、地球全域をカバーできるため多数のデータ収集が期待される。

 ロシアやフランスの研究者は80年代以降、地震の前にVLF(超長波)電波が異常に発生する現象を多数報告してきた。日本では96年度から、科学技術庁の「地震総合フロンティア研究」の中で研究が進み、阪神大震災などのデータ解析の結果、地震前のVLFの伝わり方の異常は電離層の異常が原因とみられることが分かった。こうした成果にフランス国立宇宙研究センターが注目。自然災害防止につながる最優先課題として衛星打ち上げを決めた。フランス大使館は「DEMETERの成果は世界全体から期待されている」と語る。

 日本では地殻変動の検出による地震予知研究が主流だ。VLF研究は「客観的な検証に耐え得る段階に達していない」などとして同フロンティア研究の予算が00年度で打ち切られた。

 衛星データの分析に参加する早川正士・電気通信大教授は「電磁気現象による地震予知研究は海外で高く評価されている。日本では地震学者から『メカニズムがよく分からず信用できない』と批判されているので、メカニズムを説明できるよう研究を進めたい」と話している。(毎日新聞)

(編集者コメント:ロシア、米国では衛星利用の地震予知で研究が進められており、米国では「地震予報」なる衛星利用地震情報提供の商業サービス計画も進んでいる。地震国である日本でも視点を変えた研究を受け入れる文化がほしいものである。)