2002-12-09 宇宙の技術を建築に応用:東大宇宙建築研究会発足

 宇宙開発で生まれた技術を地上の産業に応用する、いわゆる宇宙技術移転(Technology Transfer)の一環として、東京大学大学院工学系研究科建築学内に、宇宙技術の地上建築への応用を研究するグループが発足した。
 この「宇宙建築研究会」は、同大学の坂本・松本研究室内に設けられたが、今年度のプロジェクトとして、経済産業省が支援するIMS(Intelligent Manufacturing Systems)プログラムの一環として、宇宙技術を応用した新しい建築生産システムや、環境、持続可能性などを配慮した新しい建築概念に関するフィージビリティスタディを実施する。
 今年度の成果が評価されると、来年度から具体的な建築システムを開発することになり、保守的と言われる建築界に新しい技術が生み出させることが期待されている。

 この研究会は、松村助教授を中心に、米国で宇宙建築を研究した専門家や、建設会社、宇宙関連企業からの専門家らを中心に研究を進めている。メンバーとしては、大串純氏(大串建築事務所)、野崎健次氏(清水建設)、村川恭介氏(スペースレフ)らが参加し、有人宇宙システムらも今後の有人宇宙施設への応用が期待できることから積極的に加わっている。これまでに、海外の宇宙建築に興味を持つ学術関係者も参加しており、今後、世界的な技術交換のネットワーク作りを促進していく。

 宇宙技術の地上への移転は、冷戦終結後の宇宙開発にとって重要な懸案となっている。米ソ冷戦までは、国威高揚、防衛、軍備などの理由から、多額の予算が宇宙開発に注がれてきた。冷戦後、「何のための宇宙開発か?」という目的を失った宇宙開発は、新しい産業の創出や研究開発などへ、活動の目的を修正する必要に迫られた。その目的の一つが宇宙技術の移転である。

 応用が期待されている宇宙技術としては、閉鎖系生命維持システム、国際宇宙ステーション建設技術、新材料、ロボティックス、通信、ナビゲーション、リモートセンシング、月面基地、火星基地等が含まれる。同研究会では、地球環境を一切汚染しない、自律自助型建築開発にも視野に入れており、開発されたシステムを自然が豊富な開発途上国の建築に応用し、自然環境保護と、自然の破壊につながりかねない建設行為を両立させるシステム開発に挑戦していく。

 また、習得した技術成果を逆に宇宙建築に応用する研究も同時に実施する。例として火星基地、月面基地、軌道上施設、惑星間宇宙施設などである。

 同研究会では、同研究会に参加する学生の設計成果を発表する場として、科学系の博物館と協力して、学生が制作した建築模型などを積極的に展示するプログラムを支援していく。(スペースレフ)