2005-09-20 NASA、新宇宙探査ミッションシナリオを公表

NASAは宇宙探査システムアーキテクチャ調査検討の結果を発表した。その結果、10年後までに宇宙飛行士を月に送り込む計画である。新型宇宙船はアポロ宇宙船のカプセル型となっているが、大きさは当時の3倍となっている。以下はプレス発表された結果報告である。


これから10年後までにはNASAは再び月面探査を開始する。この時には月面に人間が滞在し、基地を建設し、そして将来は火星、あるいはその先の惑星への有人探査実現のための道を切り開くことに挑戦する。過去の肖像的アポロ計画をただ繰り返すようなイメージを抱くかもしれないが、昔の月面探査とは全く異なる。

月軌道上の新型有人宇宙探査船:NASA

この旅は間もなく開始され、新しい宇宙船も開発される。アポロとスペースシャトルの最高の技術を基本としたNASAの21世紀型宇宙探査システムは実現可能、高信頼性、多用性、そして安全性を兼ね備えている。

このシステムの中核をなす新型宇宙船は4人の宇宙飛行士を月と地球の間を往復させ、さらに将来の火星探査では最大6人までの宇宙飛行士を輸送することが可能である。また、国際宇宙ステーションへの乗員及び物資の輸送にも利用することが可能である。

新型有人宇宙船はアポロ宇宙船カプセルのような外観をしているが、大きさはアポロの3倍あり、4人の宇宙飛行士を一度に輸送することが可能である。

この宇宙船には太陽電池パネルが備わっており発電能力がある。また、カプセルと月着陸船にはエンジンに液体メタンを使用する。メタンを使用する理由は、NASAとしては、将来の火星探査実現の時には、火星大気を利用してロケット推進剤としてメタンを生産する計画があるためである。

新型宇宙船は最大10回まで再使用可能である。宇宙船がパラシュートを利用して地球に着地した後、NASAはカプセルを容易に回収し、熱遮蔽材を交換し、再度打ち上げらる。

新型月着陸船と連結しながら、このシステムはアポロ時代の2倍の宇宙飛行士を月に送り込むことが出来る。また、最初のミッションでは月面滞在日数は4日から6日程度だが、その後はより長期間滞在可能となる。アポロは月クレータに沿った場所に着陸しないように制限が掛けられていたが、新型宇宙船は月面のいかなる場所にも着陸可能な十分な燃料を備えている。

月面基地が建設されると、月面の宇宙飛行士は最長6ヶ月程度滞在可能となる。宇宙船は宇宙飛行士が居なくても軌道上を自動で周回することも可能で、軌道上に宇宙飛行士1人を残しておく必要も無く、全ての宇宙飛行士が月面に降り立つことが可能となる。

安全性と信頼性

宇宙飛行士を月面に着陸させるための打上げシステムは、強力で信頼の高いスペースシャトル推進システムを基本としている。宇宙飛行士はシャトル固体燃料ロケットブースターを使用して打ち上げられる。第二段目はスペースシャトルのメインエンジンを使用する。

(左画像 NASAの新大型ロケットの概念設計を示す。)

二番目に、大型ロケットにはより長い固体ロケットブースタ2機とシャトルメインエンジン5機が使用され、低軌道まで125トンものペイロードを打ち上げることが出来る。これはシャトルオービタの重量の1.5倍である。この多彩なシステムは、月や火星まで行くのに必要な物資輸送や部品を輸送するのに使用される。この大型ロケットは宇宙飛行士を輸送するためにはシステムを一部修正変更することで対応可能にもなる。

とりわけ、この打上げシステムの特徴はシャトルよりも10倍も高い安全性である。それはカプセルの頂上に緊急避難用ロケットが備わっていることで、打上げ時に問題が発生した場合、乗組員は瞬時に脱出することができる。また、カプセルがロケットの最上部に取り付けられていることから、切り離されたロケットの破片によってダメージを受ける心配もほとんど無い。

飛行計画

5年後には新宇宙船は国際宇宙ステーションに物資と乗組員の輸送を開始する。計画では年間少なくとも6回は往復する必要がある。その一方で、ロボットミッションが月面探査の準備作業として実施される。2018年には有人月ミッションが再開する。ここで宇宙ミッションは急展開してしてゆく。

 大型ロケットは月着陸船と、地球軌道離脱に必要な離脱ステージを打ち上げる(左下)。宇宙飛行士は別に打ち上げられる(下中央)。そしてカプセルは着陸船と軌道離脱ステージとドッキングし、一路月に向かって飛行を開始する(下右)。

3日後、飛行士は月軌道に投入される(下左)。4人の飛行士は着陸船に乗り込み、カプセルを離れ、カプセルは軌道を周回し続ける。着陸船が月面に着陸した後、7日間の月面探査を実施する。その後、飛行士は着陸船の一部にある発射台から打ち上げられ、軌道を周回しているカプセルに再度ドッキングし、そのカプセルに乗って地球に帰還する。地球軌道離脱の段階に入ると、サービスモジュールは破棄され、熱遮蔽シールドもミッションの間初めて露出する。パラシュートが開き、熱遮蔽もはがされ、カプセルは陸地に着陸する(下右)。



さらなる宇宙へ

最低限、年2回の有人月ミッションを実行した後、作業は恒久月面基地建設の方向に急速に展開してゆく。飛行士は長期間月面に滞在し、月資源利用技術を学習する。一方で着陸船は物資輸送のために片道飛行を行う。最終的には新システムは、月面基地と地球の間を6ヶ月間毎に飛行士のローテーションをサポートすることになる。

計画担当者は、南極を基地建設の有力な場所として考えている。南極には、水の状態で豊富な水素が存在すると考えられており、また南極は電力確保に必要な太陽光を十分に確保できると考えられている。

(右画像四人の宇宙飛行士が新着陸船で月面に降りる。)

これらの月計画によって、NASAは火星探査に向けて大きく前進することになる。火星に向かうための大型ロケットは既に手に入れているだろうし、多用途の有人カプセル、そして火星の天然資源を利用して燃料を補給する推進システムも手に入れている。月面基地は地球からたったの3日の距離にあるが、火星に向けた長い長い飛行を開始する前に、地球以外の惑星で”居住生活”を行うために必要な訓練を月面で行うことが可能となる。