SpaceX、SSTLの株を取得:真の宇宙産業の先駆けとなるか

イーロン・ムスクのSpaceXは、低コストロケットのファルコン1号の打ち上げで遅れに直面しているが、英国のサリー衛星技術会社(SSTL)の10パーセントを獲得というニュースは驚くべきである。SpaceXによれば、第一に良い投資だったとしている。
長期的な視点から見て今回の投資には疑問はない。

 20年間以上、SSTLは小型衛星の世界的なリーダーだった。リモート・センシング、科学ミッション、ナビゲーションといった要求を満足するプラットフォームの標準モデルを開発した。世界中の重要なクライアントを抱えており、将来のヨーロッパ、米国およびアジアの宇宙プログラムに重要な役割を果たそうとしている。

 今年後半、ガリレオ・システム・テスト・ベッド(GSTB)V2A衛星を打ち上げる。その主な目的は、EUが将来のナビゲーション・システムで要求している周波数が国際電気通信連合の規則の下での利用可能性を確認することにある。さらに、ESAとEUは地上ネットワークの試験を開始できるようになる。

さらに、SSTLは、災害モニタリング衛星群の衛星のためのリードメーカーである。この衛星群は最初の衛星を購入し打ち上げを希望するアルジェリア、ナイジェリアおよびトルコのような国家にとって良い機会であった。サリーは米国国防総省向けの衛星、コンポーネントや装置も製造した。世界中のほとんどの衛星メーカは、SSTLの広い国際的な顧客ベースを持っていない。

 今回のSpaceXの株購入は、SpaceXにとってSSTL衛星打ち上げ契約に対して優先的な立場になることは無い。歴史上、SSTLのほとんどの衛星はロシアのロケットで打ち上げられている。SpaceXのメリットとしては、SSTLに対し、ロケットとペイロードのインタフェースが可能な限り信頼性が確保できるように支援を要求することができる。

SSTLの過去の経験に対する価値は、発射プラットフォームのインテグレーションと打ち上げ前処理の技術にある。SpaceXは、中型のファルコン5ロケットを使用して小型衛星2機を打ち上げることを希望している。この英国企業は応用分野向けに専門家を提供するよう要求されるかもしれない。言い換えれば、今回の取り引きでSpaceXとSSTが「戦略的同盟」を締結することは無いと見ることができる。

最近の一時的な企業提携の流行は、自我を満足させるCEOの希望と、1990年代中頃の栄光時期に戻ろうとするM&A専門家との利害が一致していることに関係するようだ。SpaceXが最初のファルコン1を成功裡に打ち上げた後、ペンタゴンに一連のファルコン1-Microsat 400ミッション・パッケージを提供するためにSSTLと連携した。このシステムによって米軍は500-キログラム・クラス衛星用ペイロードで実験することが可能となる。

年間3つのミッションが安定した生産の基礎を提供することで、両方の会社がコストを抑えることが可能となる。確かに、問題の多いT-Sat次世代通信衛星プログラム用の技術を確実なものにするために、ペンタゴンはこのようは組み合わせを期待しているかもしれない。

SpaceXは、3月にもカリフォルニアのバンデンバーグ空軍基地から最初のファルコン1ロケットを打ち上げたいとしている。マーリン(Merlin)第一段モータの試験を完成していない。もしすべてのテストが順調に進むと、予定通りにスケジュールが進む。最初の打上げが順調に成功すると、今年さらに3回の打上げを計画している。ファルコン1を2回、そしてより大型のファルコン5をビゲローエアロスペース向けに打ち上げる。多くの夢がこの最初の飛行に依存している。

小さな会社が実際にロケットを製造し、衛星を軌道に投入するというアイディア全体が試されることになる。SSTLとSpaceXの関係は、小規模で新規参入企業による新たな投資活動の先駆者となるかも知れない。多くの才能および創造的なエネルギーがいたるところに存在している。いかなる会社もそれを独占することはでない。例えば、バート・ルタンのスペースシップワンは、SpaceDevが開発した革新的なハイブリッドエンジンを使用し、それ以外の小規模で革新的な企業からの技術の提供を受けて実現している。

過去数年の間に、新規事業家によって宇宙産業そのものの発展が促進されている。それらは、ゆっくりだが新しく、しかもコスト効率の良い製品を出現させている。これはダイナミックな資本主義経済の中の正常な方法である。SSTLとSpaceXの関係は、より小さな企業による新投資のための先駆者かもしれない。

宇宙産業全体にのしかかる最も大きな疑問は次のとおりである:

彼らの製品を必要とする潜在需要はどのようなものなのか?
それはいつかは「個人の衛星」打上げという需要に発展するということなのか?
一個人が実際に商用リモート・センシング衛星からの画像を購入し始めるのだろうか?
低軌道を周回するカジノや老人ホームは可能性としてはどうなのか?

宇宙産業界は、打上げコストが劇的に低下した暁には、需要は激増するだろうとという仮説と期待のもとで事業を続けてきた。いくつかの研究、特に昨年のFutron社の ASCENT市場調査では、これを示しているように見えが、それはまだほとんど推測の域を出ていない。既に明らかなことは、人間というものはつねに拡張する衝動を抱いているということである。

ある者にとっては、地球上ではもやは見つけることのできない広いオープンスペースを本当に必要としているかもしれない。何にしても結局は、いつかは新しい地球外経済が創出されるための原動力となっている。宇宙という新らしい産業を築くであろうすべての商業取引や投資はすべて、否認できない強い願望や信仰に近い精神的土台の上に築かれている。ビジネスの中には、優秀な才能を最悪な方向に利用することで成功するものもある。宇宙産業は、人間の魂の最良且つ最も高貴な部分にアピールすることで繁栄する。とはいいながら、ほんとうに利益の出るビジネスモデルなのだろうか? 疑問は残る。