宇宙ステーションの維持

要約

NASAは商業化と叫びながら実行していない。また、NASAはロシア宇宙ステーションのミールを早く破棄するように提言している。しかしミールの商業化が先行しており、商業利用はロシアに多くの支援を与え、航空宇宙インフラ、科学者などのレベルを維持することに役立つし、結果として、ロシアがISSへの義務を果てせる能力を技術的にも財政的にも維持することになる。米国は、ミールを支援し、結果としてISS商業化を成功させることになる。同時に、NASAは言葉だけの商業化をやめ、早急に歩き出すべきである。

マイケル・ヘネー
宇宙フロンティア協会会長。

翻訳:スペースレフ社 村川
コメント:宇宙フロンティア協会は、宇宙起業家推進を行っており、
宇宙商業化の活動を行っている。若干、急進的である。

 宇宙ステーションの商業化は、我々が新しいミレニアムを始めるとともに、活発なスタートをきったように見える。先の8月(1999)に、SpaceHabとカナダは、ISSのための最初の商業利用協定に署名した。これに続き、SpaceHabは、ISSのロシア部分に「エンタープライズ」モジュールを構築し打上げることで、先月ロシアのエネルギアと協定に署名した。また、最近、ゴールド&アペル社(Gold & Appel)のミール商業化利用活動(MirCorp:詳細はそうかもしれないが、実際は大まかなもの)は、ニュースになった。

  ここであるパターンに気づくかどうか。これらの初期の活動のうちのいかなるものも、NASAあるいはアメリカのかかわりを見つけることが無い。NASAが商業化を希望している云々といっている間に、また、恐らく組立てが完成した時点で民間の手にISSを移管するなどと言っている間に、我が国際パートナーはとにかく実現してしまった。

 この時点での疑問は、この商業活動の突然の動きに対する米国の反応であろう。我々は、宇宙技術流出問題が、商務省から国務省に移動したことを理解した。この問題は、これまで国内の航空宇宙産業を支援したのではなく痛めつけたように見える。また、NASAはロシア人にミールを停止してほしいと希望していることが知られている。

MirCorp問題は短期に注意深く近寄って見るものである。この件は、商業化について言及するときにNASAがどの程度偽りの無い誠実なものか、我々に詳細に見る機会を提供してくれる。

 現在までは、良い結果を残していない。NASAのスタンスは、”我々がそれをコントロールする限り、商業化はよい。”と言っているように見える。昨年9月の宇宙フロンティア協会会議で、ゴールディンNASA長官は、地球低軌道を他に任せ、民間に運用を任せる方向に転換すると述べ、迅速な立法措置によってNASAがシャトルとステーションのサービスからNASAの利益のために民間に移管すると語った。

  その後、乗務員帰還宇宙船(Crew Return Vehicle :CRV) の設計要求書提案の募集を発表したが、ここでは、6センチの範囲内にX-38の設計を適合するよう指示されている。ある者は、商業化という環境の中ではNASAは他の宇宙機プロジェクトよりも機能と可能性を追い求めているように見える。現在までのNASAの商業化活動は、彼らが言及した言葉を実行していない。

 ロシアとの商業活動が何故良いのか、多くの理由がある。ISSのプログラムへロシアを引き入れるために言われた理由の一つに、ロシアの航空宇宙インフラストラクチュアを完全にしておくことを支援し、科学者が仕事を他に捜す必要のあった状況を回避することだった。科学者達は、現在は存在していないが、どこかの国がミサイル開発能力をつけるための支援をする恐れがあると危惧されていた。MirCorpのようなロシアとの商業活動は唯一助けになることができる。また、それらは納税者にではなく、産業界からの支出で行っている。また、航空宇宙産業用の増加した労働の流動化は、技術が鈍っておらず、また経験を積んだ労働者がそのままであることを認識するための助けとなるし、労働者の才能を保持することができる。シャトル・システムの最近の低い飛行頻度に関して、類似した状況があった。つまり、生産ラインを回転させておくことに、利益があるというものである。

 しかし、もちろん、これとは異なる。それは、NASAのコントロールの全く外部にある何かである。また、それはNASA-ISSを得ようと努力する唯一の現実的ゲームへの直接の競争相手である。自由経済システムでは、競争はよいことである。しかし、政府は自由企業競技場の中ではよいプレーヤーにならない。我々が持っている宇宙局は、自由商取引を話す局である。しかし、常に物事に制限を加え、その結果、これはだめという。

”我々は、商業化と民営化のためにすべてを捧げている。”と言いながら、”ただし。。。”を付け加えてしまうのである。

 ミールに関して言えば、心配の種は、ISSの要求を満足させるロシア人の能力である。NASAは次のようなコメントから始める。”ミールが軌道上に残ろうが我々は関知しない。ただし、ISSの要求条件を全うするだけのロシア人側の能力を邪魔しないならばの話である。” そして、NASAは、邪魔をしないならばというものに、ISSとは関係ないか、ミールの軌道離脱の予定とは関係の無いソユーズ或いはプロトンの打上に関する何かを持ち出す。ミールを停止して、ISSに集中することが唯一意味のある行動であることは明らかである。

 私が間違っていてことを切に望むし、NASAと米国政府がミールの商業化活動を支持することを切実に期待する。しかし、ミールを延命させることを反対するためになされる議論は間違いであることを容易に証明できる。

”ロシア人は無一文である。” それでは、彼らと取引し、彼らにある程度の現金を稼ぐ機会を与えることは意味をなさないのか、また彼らの航空宇宙インフラストラクチュアを働かせておくことは意味をなさないのだろうか。

 ”彼らのプログレスはISSのために必要である。” 2つの問題がここには有る。最初は、プログレスの打上は、ISSに関しては現時点ではすぐ必要というものではない。ただし、サービスモジュールが打上げられるまでのことだが。つまり、プログレスがドッキングする場所がISSには無いのである。また、宇宙飛行士が搭乗していない状況では、新たな物資補給は必要ない。

 次に、ミールに使用が予定されている宇宙船は購入されており、個人資金によって支払われている。これらは、ISS向けの宇宙船では”ない”のである。そして、ISSのスケジュールに起こっていることを見れば、ISS向けに飛行する前にミール向けに打上げられることになる。

”ロシア人は2基の宇宙ステーションを支援するための打上スケジュールを満足させることができない。”

 さて、もし、ロシア人が自分達の現金ですべての打上の資金を払っていれば、事実そうかもしれない。しかし、これはここで提案されていることではない。

 第一に、ミールへの打上は私的に資金調達されるだろう。第二に、永久にミールが宇宙飛行士によって搭乗されている必要はない。ミールへの打上は、必要に応じて行われ、必要に応じて支払われる。三番目に、軌道上に飛行を継続するために、電気力学利用テザー(縄)のアイディアを使用することで、必要なプログレスの打上回数を劇的に減少させることが可能となる。

 このプログラムがロシア人に金銭をもたらし、生産ラインを動かしておくことを支援するだろうという事実から、現実的にISSの要求を満足させるためにロシア人の能力を向上させる。

  ミール利用の提案に付加されるものの全ては、NASAがISSで嫌う内容ばかりである。つまり、宇宙旅行、フィルム製作、ISSの微重力環境などを妨害するであろう訪問者、等などである。

  この種の開発をNASAは歓迎すると期待するであろう。NASAは、商業化上のただの話を話そうとしていた。今、NASAは本当の足を動かす時が来ている。