民間企業にとっての宇宙ステーション
1998/11/16
ボーイング社副社長 兼 国際宇宙ステーション担当 ドーグ・ストーン氏

スペースニュース インタビュー

古い記事だが、国際宇宙ステーション建設の意義が時として不明朗になったとき、このインタービューをみると、ステーションの主幹企業であるボーイング社が、ステーションをどのように捉えているのかを垣間見ることで、民間企業にとってのステーションとは何なのかを知る手掛かりになると思われる。


質問:大きく予算をオーバーし、ロシア経済問題が原因でステーションプログラムを難しくしている。この計画はいまだにボーイングにとって利益のあるプログラムなのか、あるいは威信として行っているのか?

答:ボーイングは長期の有人宇宙飛行に係わる使命を持ち続けている。我々にとって核となる能力・資産は巨大なスケールのシステムインテグレーション能力である。スペースステーションは全てにおいてその能力を必要とする。これが本当のボーイング社としてのプログラムである。

質問:重要な懸念事項、特にワシントンではロシアのサービスモジュールが予定通り打上げられるかどうか心配されている。ザリャーが無事打上げられたことで、どの程度サービスモジュールを打上げることに対するプレッシャが増加したか?

答:このプログラムは開発と運用活動が平行して行われている。この時のために長期間作業を行った全ての人々にとって大変意義のある時間である。しかし、プログラムにとては大変重要な時でもある。なぜなら、全ての人に注目点が同時に様々な異なった方向へ動かされることである。

質問:ロシアとの共同作業の中から学んだ点でもっとも重要なことは何か?

答:ロシアの人々と作業を共にするとき、彼らはそれぞれの会合で同じ課題、同じシステム、同じ分野を発表する同一の顔を期待する。彼らが会合毎に新しいメンバーが参加するとき、あるいは意思決定過程が変更されたとき、彼らは不安になる。あるケースでは会合そのものの運営が困難になる。

質問:ロシアとウクライナ人とシーランチプログラムについて共同作業を開始することでボーイングの作業員と話し合ったことはあるのか?

答:シーランチプログラムに係わっている主な作業員の何人かはまず宇宙ステーションプログラムに係わっていた。我々は(ロシアとウクライナとは)良い関係を築く為に自由でオープンにアイディアを交換してきている。

質問:宇宙ステーションのように重大なプログラムを管理する上でもっとも大きな挑戦的課題は一つ挙げるとすると何か?

答:宇宙ステーションを管理(マネージメント)することは、丁度航空機を開発し試験飛行の間に一つに組み合わせているようなものである。地上では全部の宇宙機を決して組みたてる訳ではなく、打上げる前にそれぞれ全員がをお互いに十分検討し合うわけだが、最大の挑戦課題とは危険を受け止め、可能な限り高い成功率を獲得する方法を見つけることである。

質問:NASAはステーションの商業化は十分積極的に行っているか?

答:私はこの件に付いてはNASAに対して提言をする立場から離れるようにしている。産業界が宇宙ステーションを利用してどのような活動を希望しているかを理解してきた中で出来る限り多くの見識を提供しようとしてきた。現在では “ちょっと待ってくれ、見てから考えさせてくれ” というものすごく多くの人たちがいる。また、フェンス越しに眺めている人もいまだに居る。

質問:ボーイングはISSのための商業利用モジュールを開発しようとしてるのか?

答:もし我々がISSでの商業利用モジュールの需要をうまく開拓でき、また役員会を奮い立たせることが出来るようなビジネス状況が出来れば、我々は商業利用モジュールの開発に積極的になることは考えられる。

質問:シャトル・ミールプログラムからあなたは何か学ぶ点はありましたか?

答:共に宇宙飛行を行うことを確実なものにする為に、一緒に作業をする人々を管理することを早急に開始する必要性を我々に見せ付けてくれた。もし、我々がミールとの共同作業を経験していなかったら、今日のような順調な状況は生まれていなかっただろう。

質問:それは宇宙飛行士の互換・両立性の問題に付いて述べているのですか?

答:もちろんそうです。宇宙飛行士がお互いに信頼し会うのは大変重要なことである。

質問:ISSプログラムのマネージメントからあなたは何を学んだといえますか?

答:政治的な意味で、以前から知っておくべきことを学んだ。人は誰でも決定を下さなければならないときに差し掛かるとある種の神経質な状態になる。誰かの喉に何かを無理矢理押し込もうとする前に、ある決定が各パートナにどのような意味を持つことになるのかについて大変敏感になる必要がある。

質問:現在あなたが直面しているもっとも大変な仕事あ16ヶ国間のソフトウェアの互換性だと推測している。遅れを取り戻すという点では山場を越えたと考えているか?

答:私にとっては、今後数年間で全てが宇宙へ打ちあがるまではソフトウェアの互換性の問題には常に悩まされると思う。ソフトウェアはこのようなプロジェクトでは最後の自由度といえる。すべてをうまく打上げるためには、最後の自由度は規律を伴って行われるための訓練が実施されることを確実にしなければならない。

質問:このような鳴り物入りのプログラムを管理するというユニークな挑戦課題は何か?

答:われわれは このプログラムに関しては金魚蜂の中で生きているようなものである。しばらくたってから、人々が我々の行っていることすべてに対して注意深く見つめており、決めたことにあとからとやかくいってくる、という事実に慣れてくる。しかし、始めのころは、プライベートな会合がメディアに取り上げられることに少し当惑したときがあった。一般の人々が税金がどのように使用されているのか理解しようとするのは当然のことである。重要なことは開発チームのメンバーは優秀であり、積極的で、しかもものすごく誠実であることを皆さんが理解してくれていることである。

質問:各参加国を繋ぎ止めておくための多くの対策がプログラムを国際的にさせていくなかで認識できる。国際共同のための追加予算はどのくらいなのか?

答:私が思うに、利益はコストを超えている。私はこの種の議論は全ての世界中の友人と行ってきた。そして、このプログラムは、我々人類が地球低軌道を飛び出すという人類全体にとった唯一の巨大な刺激的なものであり、このことに対して誰も反対していない。我々は現在どのようにして一緒に事業を進めるのか学んでいるところであり、我々の中でベストな方法を見つけつつある。お互いにより良い方法を見つけつつある人間の行動の結果として、我々は将来には大変重要になると思われる運営上の信頼関係を築きつつある。

質問:NASAの、“より早く、より良く、より安く”の哲学はISSプログラムも含まれるのか?

答:その通りである。コスト削減を推し進めることが意味の有るところではどこでも我々は実行してきている。しかし、人間の安全性に関してはコストの削減をするつもりはない。我々はこれから15年間ISSを活用しようとしている人々に対して大きな責任を負っており、安全に運用できる環境作りには可能な限り全てのことを行ってきている。

質問:国際宇宙ステーションはしばしば今までになかった最大のエンジニアリングの偉業の一つとして表現されている。この評価をどのように受け止めているのか?

答:はっきりとはしていないが、とにかく私が言えることは、ISSは人類がかつて行ったことのない最も大変なものであるが、われわれがこの技術的に複雑な構造体を見たときに、ちゃんとそこには存在しているというものである。