商業化と民営化

マイケル・K・ハネー

出典:ヒューストンクロニクル)

マイケル・ハネー はスペースフロンティア協会会長で、航空宇宙技術コンサルティング企業のマッハ25社社長でもある。彼は、L-5ソサエティに参加した1978以来の宇宙活動家で、1997年には最初のプロスペースの年間最優秀宇宙活動家という賞を受賞している。L-5とは、ジェラルト・オニールが提唱した宇宙コロニーを月地球重力安定点のラグランジェポイントに建設を希望するメンバーで構成される協会。L5は5個あるこのラグランジェポイントを意味する。1975年8月に結成された。

シャトルの商業化(commercialization)、国際宇宙ステーションの民営化(privatization)という概念は、NASAと米国政府が今日行っている通常業務を、将来的にはより良くより輝きのある業務運営に移行するというものである。しかし、商業化と民営化は何を意味するのでしょうか?その言葉をしゃべる人々がどのような意味を付けたがっているかに係わらず、これらの言葉には”不思議の国のアリス”的な意味がある。さらに、聴衆者がどのように受け取ろうとも同様である。このことが意味することといったら、何も変わらない旧態依然とした状態をそのままにしながら、中途半端な措置や、真の変革として大きく宣伝さているが僅かづつしか進まない変化等である。

商業化推進の目的は低軌道までの宇宙輸送と低軌道での宇宙オペレーションの業務から政府を外すことである。宇宙において政府の本当の役割を考えるとき、スペース・フロンティア・ファウンデーションを含む多くの人々は、顧客やサービスを受ける利用者としての立場は政府が取り得る最も可能性の高い立場であると考えている。政府は現在サービスと施設の供給者となっているため、”離脱計画”(exit strategy)が必要である。真の商業化事業とはこの役割を担うことである。それ以下のことは、結果的に移行作業を長引かせ、最終的には商業宇宙産業に損害を与えることとなる。

商業化が有効でないいくつかの良い実例がここにある。現在のスペースシャトルの運用契約が一つのケースである。ロッキード・マーチン社とボーイング社の共同運用企業であるユナイテッド・スペース・アライアンス社(USA)はNASAの代理としてシャトルを運用している。USA社は、シャトルがどのように運航されるかに関するマネージメントの権限はかなり高いレベルにあるものの、システムが実際はどのように使用されるかといったシステムに関する権限は持っていない。打上げ機の所有権は依然として政府に属している。似たような例として、統合運用契約(CSOC)は商業化ではない。マネージメントを改善及び合理化し、効率化する試みは賞賛されるべき最終目標であるが、本当の商業化を促進するにはやることが少なすぎる。

そこで、我々が商業化と民営化を口にするとき何を求めているのだろうか?二つの言葉は手を取り合ってほとんど一つの言葉に変えるべきである。つまり、”commercializationandprivatization”ということである。どのようなビジネスでも、需要と供給が必要である。本来の自由市場の商業活動環境では、両方とも政府側よりも民間側が優勢である。

供給者として見ると、実質的に資産の所有者であり、システムの管理者となることを我々は民営化として見るし、これにはシステムに関係するコストに対して責任を持つことが含まれる。そうすると、供給者の対象となる範囲は、100パーセント政府による所有と管理から完全に民間による所有と管理まで存在する。需要者として見ると、繰り返しになるが、顧客は政府だけだから民間だけまであり得る。

スペース・フロンティア・ファウンデーションが作成した図はこの考え方を示している。この図では、政府/民間の幾つかある係わり方の例を示している。例えば、商業宇宙輸送では、最終ゴールは、民間セクターによって支配されている様々な顧客に対してサービスを提供する民間サービス提供者である。政府がサービスを購入することもあるが、その割合は市場の中のほんの一部である必要がある。この状況は、需要者と供給者の構成という意味では民間航空機産業と似ていることろがある。


現在の視点で見ると、スペースシャトルは、基本的には顧客として政府だけにサービスを提供する政府提供サービスだけで占有している。アムトラック(米国鉄道公社)は基本的には民間セクターを顧客とする政府提供サービス企業の例である。しかしアムトラックは買収され、確保できる民間セクターでの市場シェアを既に確保しているため、システムの民営化の経緯を見つけることは困難である。最初に市場確保し、その後民営化する方法は、本当の意味での商業化に移行するための実行可能な戦略ではない。

しかし、逆の場合は、話が別になる。民営化が最初でその後市場開拓という順番は可能である。もし、資産が私的に所有され運用管理されると、最初の顧客として政府をキープすることは良い最初のステップとなる。ビジネスを拡大するために、サービス提供者は、図表上で上に行くほど民間セクターの顧客に手が届くようになる。政府によって人為的或いは独断的な障壁が市場開拓のなかに強制的に介入してこない限り、本当の意味での商業活動に向かって進展を図ることが可能である。

我々はこのモデルにスペースシャトルと国際宇宙ステーションに当てはめてみたい。資産の民間の”所有者”は政府に対して全コストを負担する必要はない。大体が、公正な市場での価格ではない。必要なことは、新しく所有者になった者は、システムに対する全てのコストに責任を持つことが前提である。このコストには、施設の拡張やグレードアップ等が含まれる。政府は、サービスを受ける顧客の一人であるが、所有者は、民間セクターにサービスの市場開拓を行う権利を有する。最初に民営化することによって、顧客の中に民間セクターの割合が増加し、そして本当の商業利用運用を手にすることとなる。

一般的に人々が商業化を語るときに、我々は、彼らが現実的なことを話していることを認識する必要がある。我々は、生半可な状態で満足すべきではないし、商業化の見せびらかしのような遅々と進まない変革を容認すべきではない。民間が所有することと、本来の民間の顧客に対する市場開拓に専念することが最終目標であり、それ以外は満足すべきではない。