官僚組織を動機づけること

アレックス・ギマーク

現在、ペトロレムウム・レザボア・データ社勤務。彼は、外部燃料タンクの応用に関してスペース・スタディ・インスティチュート報告書を書いた。また、宇宙フロンティア財団のアルファ・タウンプロジェクトをリードする予定である。

  宇宙開発推進者が、我々自身も含む多くの人々を、恒久的に地球から宇宙へ送り出すためにどうすればよいのだろうか。

 それには様々な方法がある。 NSS(全米宇宙協会:National Space Society)ルートを歩き、NASAのチアリーダーの役割をするというのはどうだろう? 産業界に入り、国から次の大きな契約を獲得しようとする。あるいは、ロバート・ズブリン(民間の火星有人ミッション提唱者)のような方法で、政府の旗振り役の議員にロビー活動を行い、火星ミッションへ足がかりを築くことも出来る。あるいは、有人宇宙飛行に必要となるもろもろの新しい市場を作ろうとすることもできる。

 そして、スペース・フロンティア財団(Space Frontier Foundation)ルートと呼ばれるものがあるかもしれない。財団は起業家的精神の持ち主向け組織として認識される中、市場を中心に考える手法は、我々の選択した技法であると言える。それでは、なぜ、このようなときそこ、民間による商業的な、そして非政府機関による活動が有人宇宙プログラムには存在しないのか?市場主導的(マーケットドリブン)アプローチに対する批評家は、それは宇宙が単に高価過ぎるし、また困難が多すぎると言う。また、その種の市場に向かって常に飛び込んでくるような人は殆どいないと否定的に見る。しかし、これは本質的には水掛論である。

 我々は、市場主導の宇宙活動があるかどうか確かめることによりそのような批評家に答えることができる。今日、最も活気があり、最も競争が激しく、最も価値のある活動は、商業用宇宙通信業界で起こっている。多くの企業が、顧客獲得、市場占有、ロケット打上げ力向上、およびベンチャーキャピタルからの資金調達のために競争をしている。これらの内の少数の企業は劇的に成功するが、大多数は高価な失敗になると考えられる。それは、最小の妨害と障壁の中で行われる自由主義市場での商行為の全てにいえることである。

 通信衛星市場はロケット打上げ業界に効果的であった。既存のロケットメーカー、国際的企業および起業家の事業開始等による競争は、全面的なコスト低減に貢献したばかりでなく、非有人ロケット打上げ分野で買い手市場つまり供給過剰状態を生み出した。

 それでは、なぜ我々は宇宙商業利用分野および非有人宇宙分野でこのような状況を発生させたのか?

 これに答えるために、宇宙開発の責任者が誰であるか、見極める必要がある。宇宙通信市場では、所有権が、会社、株主、投資者および利用者レベルに存在するという全て正常な位置にあり、また健全で競争原理が働くようにコントロールされている。米国の有人宇宙分野では、すべての有人宇宙活動を政府が独占している。政府以外は誰も有人ミッションを行わない。ここ数年にわたって、この納税者に支持された独占状態は強固であった。

 独占という行為が時間とともに向かっていく傾向の一つが、その独占状態を維持し、大きさ、範囲及び権威を拡張しようとする傾向にあることである。官僚政治を支援した国や納税者は、強制されない限りその独占を放棄することに強い抵抗を示す。

 議会はどのようにして国の独占を壊すのか。一つの方法は、正しい政治的な被指名人を承認することである。別の方法としては、年間予算支出を立法化することである。不運にも、これが今のところ可能な手段である。これらの方法で、官僚組織の2から3段階まで到達することは可能であるが、通常は自分らより下へは達せず、自分より低いレベルに触れることは無い。NASA長官はこのようなことをたくさん出来る唯一の人物である。

 我々はNASAを宇宙局として認識することをやめる必要がある。我々は、NASAを、他の国家官僚組織が行動するのと同様な単に一つの国家官僚組織として見始める必要がある。これはNASAのバッシングではない。これは単に状況を言っているだけである。

 官僚政治がどう活動し成長するかを管理する規則は有名で、官僚政治のために、徹底的に記述された。というのも、古代の中国の帝国官僚政治が存在していた時代以来、我々とともに存在していたのである。

その内容の説明を簡単にするために、次の質問をし答えることで理解できるであろう。

1. Q:官僚政治は常に何をしたがっているのか。 答:より大きくなり、より力を増し、範囲を拡大し、資金調達および権威を拡大しようとする。

2. Q:既存の連邦政府の官僚政治内にある連邦行政部(Federal Civil Service:GS/GM)は何を望むか。 答:助成、賃上げ、ボーナス、ぜいたくの中の引退。

3. Q:どのようにして昇進するか。あるいは、支払いを増加させるか。 答:官僚政治を育てることによって実現。

行政あるいは議会の方針にかかわらず、確固とした官僚政治の中で有人宇宙飛行に関するいかなる権限も返上する動機付けが無い。なぜなら、もし返上してしまうと、パイが小さくなってしまうからである。

その結果、有人宇宙飛行ビジネスに参入しようとするあらゆる事業家の努力は、最後にはやめる決断を迫られる。事業化側は最終目標を変更できるし、その点では官僚側も同じである。 あるいは、気の進まない官僚と規則制定プロセスを通して徹底的に民間を打ちのめすことで、企業の投資資金をすべて無駄に支出させることも出来る。

20年前に、航空空路管制官(Air Traffic Controllers)組合は、賃上げのために積極的なキャンペーンを行った。その時代では彼らは国家公務員であった。彼らの交渉技術の一つは、仕事を遅らせ、航空交通を混乱させることであった。仕事の遅延は、全ての連邦航空局の規則に従うということによって実施された。他のあらゆる公務員の組織も同様な技術を使った。彼らは投資資金が吹っ飛んでしまうまで事業家の積極性を減退させてしまう。

企業家が直面した困難な状況について、去年10月に行われた宇宙フロンティア財団会議(Foundation Conference)の金曜日のセッションで、一人の男性が強調して語った。彼は、シャトルに関する広範な経験を持ち、25年間NASAの職員であることを明確にした上で、NASAの方向について苦情を述べた。大規模なプログラムの不足、また次の大きなプログラムが議会によって承認されるまで何も行動を起こさないと述べた。

我々はどうのようにして公務員を動機づけさせることが出来るのか。我々はどうやって彼らの専門知識、情熱および知識を利用出来るのだろうか。彼らが我々の邪魔をしないで、我々の側に乗ってくるようにするためにはどうしたらよいのだろうか。

方法はある。それは、直接的に助成金支払いと行動に対する代償の支払いに帰結する。

毎年宇宙に飛行する非NASA職員、非国家公務員に対して、あらゆる助成、定期昇給、ボーナス、キャリア昇進を結びつける項目を、議会がNASA歳出法案に含めていたなら、積極的で自発的な有人宇宙飛行の支持がある中で、NASA官僚主義の中の動機付け或いは考え方が急激に変化すると考える。この種の立法措置は公務員法(Civil Service Act)の修正が必要になるかもしれない。

例えば次のようなものである。もし、宇宙に飛行する非政府関係者の数が目標に達した場合は、助成金とボーナスを支払う。もし、その人数が増加しない場合は支払いもしないし給与等級もしない。このような法律を有人宇宙推進側に照準を当てて検討してほしい。非有人宇宙支持者では過去数年間のミッションの成功の数や成功率のような適切な責務実行者に対して助成金支払いとボーナス支給を組み合わせた同様な法律を提案することが出来る。

ここでのポイントは、2000年前にローマ人がカルタゴで使った手法以外で、または、1981年にレーガン大統領が航空通管制官に対して行った措置以外の何か別の方法を使って、官僚組織を動機付けて動かすことである。毎年宇宙を飛行する非国家公務員の数を増加させるための助成金とボーナスの支給を抱き合わせることは、それを実現するための上品な方法である。ひとたび、適切に動機付けがされれば、起業家的精神の持ち主たちから芝地を守ろうとしている気が進まない官僚組織の中に発生する僅かだが扱いにくい問題はすべて、一吹きの煙のように消滅するだろう。