商業宇宙法の修正法案内容

現在、議会に提出されている宇宙ステーション商業化に向けた具体的な施策

第108条 宇宙ステーション商業開発実証プログラム

(a)事実認定−議会は以下の点を確認 

(1)宇宙での民間及び公共事業を支援する、新しい市場、新しい生産品、新しいサービスを可能にする宇宙の商業化開発の促進は、米国にとって利益のあることである。

(2)地球低軌道上の商業化開発は、自己資金を投入する民間企業の宇宙ステーション利用によって促進される。

(3)宇宙利用と運営の高額な費用は、新しい商業分野とサービス開発の大きな壁となっている。

(4)国際宇宙ステーションにおいてアメリカの商業利用は、予測可能な価格設定システムによってさらに促進される。

(5)国際宇宙ステーションの米国による商業利用から得られる結果を鑑みることで、NASAの運営費と国際宇宙ステーションの運用及び維持管理費用を削減できると予想される。

(b)価格設定権限
商業宇宙法第101条で公布する政策に従い、長官は、国際宇宙ステーションの軌道上のリソースと滞在施設、輸送サービスとそれに関連する地上施設の利用価格構成を設定する。

(c)目的−この価格設定権限の目的は、国際宇宙ステーションと、それに関連する基盤施設に関わる民間企業の事業運用の実現性と継続性の実証を可能にさせるためのものである。

(d)長官の義務
この101条の規定を執行するために、長官は以下の項目を実施する。

(1)戦略的な広報活動を通じて、国際宇宙ステーションの特質の利用に関する商業的事業化を促進する。

(2)国際宇宙ステーションの米国による革新的な商業利用を提案する非航空宇宙関連企業を発掘する。

(3)民間セクターとの共同事業、弁済、バーター取引を行うために、改正版1958年国家航空宇宙法の権能を、最大限拡大して利用する。

(4)国際宇宙ステーションの非主要目的利用は、主要目的利用者との非接触を基本として、利用契約が可能であることを確実に認識する。

(e)価格構成

(1)国際宇宙ステーションの商業的事業化に対して民間資金を投入するよう、民間企業を促すために、長官は、国際宇宙ステーションのリソースと滞在施設、輸送サービスとそれに関連する基盤施設の米国による商業的利用のための損益分岐ぎりぎりの市場原理を元にした価格構成を作成すべきである。もし、実力のある民間企業ベンダーがNASAに匹敵するサービスを提供する場合は、NASAの価格は、一般的な市場価格を元に決定されるべきである。一般的市場価格が無い場合は、民間企業ベンダーが提供する価格を元にする。国際宇宙ステーションを行き来するスペースシャトルの場合のみの輸送サービス価格は、1998年商業宇宙法に規定されるスペースシャトルに適応される規制の対象となる。

(2)長官は、要求されたように最新で、しかも(e)項(1)に従って作成された市場原理を基にした価格構成を、この修正法案が通過した後120日以内に発表しなければならない。この価格構成は、この項の規定を元に作成された損益分岐点ぎりぎりの最低価格であるべきである。

(3)場合によっては、商業的事業がビジネス的に利益が出せるように十分成熟するまでは、発展途上期間や限界費用の確保が遅れている間は、米国の商業利用を支援するために必要とされるNASAの損益分岐コストの全部、あるいは一部の回収を、NASA長官は放棄しても良い。商業的事業が利益を発生するように成熟した時点で、NASA長官は、事業運用のために政府の助成金を当てにする民間事業家の発生を除外するために、最低限、損益分岐コストを全額回収することができる。

(4)長官は、国際宇宙ステーションの非主要目的利用を積極的に行おうとする米国の商業利用者に対しては、前項のコストの放棄をしてはならない。

(5)補足---本条のコスト放棄においては、長官は以下の点を考慮しなければならない。

(A) リスクに応じた民間資金の相対的金額
(B) 関係するビジネス的なリスク
(C) ビジネス事業家によって行われるべき潜在的な市場性
(D) 提案されたビジネス事業が、その製品やサービスの市場価値が、運用に関連する損益分岐コストを超えることが出来る可能性
(E) 損益分岐コストの大きさ、及び成長期にあるビジネス事業を維持するのに必要な米国政府の支援の期間

(f)収益の再投資に向けた実証プログラム

(1)回収されたいかなる収益も、米国企業による商業利用の支援にNASAが負担した直接及び間接経費を、まず最初に埋め合わせるために使用する。

(2)前項で認識されたこれらのコストを超えた部分の収益は、国際宇宙ステーションの利用による地球低軌道の米国経済開発の増加を促進するために使用するよう、長官によって留保しても良い。回収された金額は承認無しに長官の裁量で歳出として扱うことが可能である。また、国の年度予算の制限無しに、本条各項で規定されたように分配し使用することも可能である。

(3)NASAは回収された収益とその使途に関する年次報告書を作成しなければならない。この報告書は、このプログラムの各年度末の60日以内に提出されなければならない。そして、最低2年間に渡って、前年度の収益と次年度の見込みと計画を含まなければならない。

(g)プログラム評価-NASAは、このプログラムの効果を評価するために使用される成否の評価方法を策定しなければならない。そして、その結果を(f)項(3)にある報告書の一部として成否の評価に関した年次報告をする。そして、この実証プログラムの外部独立機関による評価を実施する。NASAはこの実証プログラムの最終報告書を作成し、国際宇宙ステーション組み立て完了以前、或いは、2004年度末以前の120日以内に議会に提出する。この報告書は、プログラムの効果の最終評価を含み、成否の評価、独立機関による評価、そして、この実証プログラムに関連して学んだ国際宇宙ステーションの商業化の長期計画を含む。

(h)定義-本条での各用語の定義:

(1)"非主要目的利用" とは、宇宙環境の特質から導かれる研究、開発、そして製造、及び教育目的以外の利用を意味する。

(2)"米国の商業利用"とは、製品の販売やサービスの提供、或いは就業機会の創出を通じて、米国経済に利益をもたらし得る概念の論証(proof of concept)、或いは実寸大(full-scale)民間商業プロジェクトを意味する。

(3)"発展の可能性のある民間企業提供者(vendor)"とは、国際宇宙ステーションによって提供されるものと同等のサービスを、提供の可能性、或いは現に提供していること、そして合理的に見て提供が期待できることを実証した民間企業提供者を意味する。

(i)制限事項-収益を再投資するためのこの実証プログラムと(f)項(2)に示す権限は、国際宇宙ステーション組み立て完了の前、或いは2004年度末以前に締結された契約、及び開始されていた民間プロジェクトに適用される。